りつこの読書と落語メモ

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穴

★★★★★

仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ夏。見たことのない黒い獣の後を追ううちに、私は得体の知れない穴に落ちる。夫の家族や隣人たちも、何かがおかしい。平凡な日常の中にときおり顔を覗かせる異界。『工場』で新潮新人賞織田作之助賞をダブル受賞した著者による待望の第二作品集。芥川賞を受賞した表題作ほか二篇を収録。

面白い。どこがどうとは言えないのだが日本文学だなぁ!ちゃんと文学だなぁ!という感じ。これみよがしな文章ではないのだがじわじわくる。
「工場」よりも普遍性があって芥川賞受賞もむべなるかな。

なにも起こりそうにないつまらない日常のなかに紛れ込んでくる異常。
見たことのないような獣、穴、エキセントリックな義兄、一日中水をまく義祖父、どんどん出てくる子ども、どんどん集まる老人。
そういう目に見えておかしなこともそうなのだがそれ以上に、引越し当日もかかってきた電話に出てチャラチャラ話していたり家にいる間中SNSでもやっているのか携帯にすごい勢いで入力している旦那や、さばさばしていて感じがいいけど何か不穏な空気を醸し出している姑とか、自分の基盤ともいえる部分が実はとても危うい信頼できないもので成り立っているというところをさりげなく描いていてある意味ホラー…。
違和感を覚えながらも騒ぐでもなく受け入れていく主人公の落ち着きになぜか救われる気分。

「いたちなく」も好き。
獅子鍋を食べながらいたちをどうやって始末したかを話しながら赤ん坊を待つ女の強さとしたたかさ。 いやぁ、面白い作家だなぁ…。好きだなぁ。