りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

舞台

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★★★

29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に…。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは―。思いきり笑い、最後にはきっと泣いてしまう。―圧倒的な面白さで読ませる傑作長篇。

西さんにしたら珍しく?物語性は薄く内省的な内容。
自意識のかたまりで恥をかくことを何よりも恐れている青年。調子に乗っていると必ず痛い目に遭うという自戒が強すぎて、何をしていても心の底から楽しめない。
常に他人の目を意識して浮かれたり必死になることが出来ない。

誰しもそういう部分はあるけれど、こういう男を西さんがここまでリアルに書くことに驚く。西作品に今まで登場した人たちとはある意味対極な気がする。
自分自身にもこういう自意識過剰なところはあるので、時々「ぎゃっ」といいたくなるような表現があってどきっとした。

人目を意識することと自分を客観視することはまるで違うことなのだなぁ。
カッコ悪い自分を認めて軽蔑しきってきた親を認めてようやく一歩前に進むことができる。成長の物語と言えるかもしれないが、前進だけではなく後退もするからなぁ…ほんとに人生はままならない。