りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

地上最後の刑事

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

★★★★★

ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されているのだ。しかし新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。同僚たちに呆れられながらも彼は地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに…なぜ捜査をつづけるのか?そう自らに問いつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事を描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞作!

面白かった!
半年後に地球が滅びることが分かっている世界。
絶望して自殺を図る者、犯罪に走る者、薬物に走る者…地域差はあるものの共通しているのは無気力感とあきらめムードだ。
そんな中、マクドナルドのトイレでベルトで首を絞め窒息死した男が見つかる。自殺が多いコンコードの街でこれも「自殺」として処理されようとする中、他殺を疑い地道な捜査を続ける新米刑事ヘンリー。
無気力状態に陥っているのは警察も例外ではなく、同僚の刑事たちは「自殺でいいじゃないか」とヘンリーを冷ややかに見つめている。

惑星のニュースを常に追いかけ続け疲弊する刑事、たよりになる先輩刑事、暴力的で気を許せない刑事、意外な閃きを見せるシングルマザーの巡査、優しさの欠片もないが優秀な検視官、魅力的だが怪しい女。
シチュエーション以外は至極まっとうな警察小説。
捜査すればするほど、出てくる証拠や証言は「自殺」を裏付けるものばかり。それなのになぜ諦めないのか。憧れの刑事になれたばかりの高揚感のためか、あるいは正義感なのか、地球滅亡という現実から目を背けるためなのか。

地球滅亡という異常事態が判断を鈍らせる。
しかしあきらめないヘンリーはついに真相にたどり着くのだが…。

地球滅亡というSF的設定が物語全体を覆っているのが実にスリリングで面白い。
三部作ということなので次回作も楽しみ!