りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

至高の落語

至高の落語

よみうり大手町ホール」で行われた「至高の落語」初日に行ってきた。
よみうり大手町ホールの開館記念公演だったわけなのだが、そんなこととは露知らず、「よみうりホール」と思い込んで有楽町に行ってしまった!
エレベータに乗ったとき、いつものようにじーさんばーさんでごった返してなかったので、いや〜な予感。恐る恐るチケットを見ると「よみうり大手町ホール」とな!ひぃーーー。
慌てて霞ヶ関へ行ったのだが、有楽町と霞ヶ関が近くて良かったー。危なかった…。

・さん坊「松竹梅」
・一之輔「粗忽の釘
・三三「橋場の雪」
〜仲入り〜
小三治「あくび指南」

さん坊さん「松竹梅」
さん坊さんといえば白酒師匠の独演会ではまくらをふったりしてちょっと生意気な前座さんという印象。ま、あれは白酒師匠が「やれ」とけしかけているようだからそれで「生意気」と言われてしまうのは気の毒か。ははは。
そんなさん坊さんだけど新しいホール、小三治師匠を引っさげての「至高の落語」初日、4000円という高いチケット代ということもあってか、緊張気味。
声も上ずっていて「がんばれ…!」と心の中で声援を送る。
声もいいし素直な落語でいい噺家さんになりそう。

一之輔師匠「粗忽の釘
出てきた一之輔師匠。「今出たさん坊さんね。あれがこのホールでの初落語ですね」と。
あーーーそういえばそうか。だからあんなに緊張していたのか。
「おれがこのホールの落語バージンを奪ってやる!と張り切って来たのに、あっさりさん坊に持って行かれて悔しい。」と。
「このホールはいいですな。なんたって駅から近い」に笑った。たしかに!

一之輔師匠の「粗忽の釘」は何度も見ているので、ああ、これか…といつもちょっぴりがっかりするのだけれど、それでも何回見てもいつも楽しい。本人も鉄板ネタだからこういう大事な席でやるのだろうな。
「落ち着かせてください」と言って隣の家に上がり込み、女房ののろけを聴かせる男。あっけにとられるおとなりさんに「(自分のノロケ話を)お土産がわりにお持ちください」と言うのが最高におかしい。

三三師匠「橋場の雪」
こういうちょっと色っぽい噺は三三師匠にぴったりだなぁ。
夢の話に本気でヤキモチを焼く女房。愚かだけれど、こんな色っぽい旦那だったら確かに無理はないかも、と思わせる。
ヤキモチ焼きの女房に色気のある若旦那に早とちりの大旦那。この3人に振り回される小僧のさだきちがなんともいえずいい味を出していて楽しい。

小三治師匠「あくび指南」
新しいホールということで「いいですな」と。
501名入るらしく、その1名っていうのはなんなんですかね。とこだわるところがおかしい。
音もいいし、こういうなだらかに上がっていく客席っていうのはそうはないですよ、とまで言ったところで、あははっ!と笑う。
こけら落としというおめでたい席だから悪いことは言わないというのと、なんとなく大物っぽくホールの評をしている自分がおかしくなったのかもしれない。
「至高の落語」というタイトルに、「ま、新しいホールで張り切って気張ってこういうタイトルにしたんでしょ」と言いながら「落語に至高も至低もないです」ときっぱり言う師匠だった。

また前に出た二人に聞くと「とてもやりやすいホール」だと言っていたと。なにより今日はお客さんがいい。斜に構えて「何か間違ったら突っ込んでやろう」という心持ちではなく、落語をゆったり楽しんで聞こうというお客さんでやりやすい、と言っていた。
「あいつらいつもどんなところで落語をやってるんですかね」に笑った。

前日の末廣亭に引き続いての「あくび指南」。
同じ噺だけれど、音響のいいホールのいい席で見られてうれしい。
教養はなくてがさつだけれど「風流」に憧れる八と「お前も好きだねぇ」とあきれる友だちがいい。
特別なくすぐりが入るわけじゃないのに「…お前も好きだねぇ」とか「そうそう。あの時おれはずいぶんたくさん子供の命を救った」とかそういうセリフがいちいちおかしい。
師匠に倣ってセリフを言ってる時はたどたどしいのに、上へ上がると女が出てきて「ちょいとお前さん」というと急にすらすらセリフが出てくる八が楽しい。
バカバカしいお稽古なのにあくびの先生が風流に見えるのがまたいい。

落語が終わって拍手をして幕がおりてくるかと思ったら、拍手をやめさせた小三治師匠。
「今日はおめでたい日なので、前の二人を呼びます」と言うと、一之輔師匠と三三師匠があがってきて師匠の両脇に。 お客さんも一緒に三本締め。「まずはこのホールに良かれ」「次はここにおいでのみなさまに良かれ」そして最後は「世界の平和のために」。
至高なんていって高い値段とりやがってと思っていたけれど、こういう場に参加できてうれしい。
そんな満足な気持ちで会場をあとにした。