りつこの読書と落語メモ

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ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密

★★★★

「ジュリアン・ウェルズという真摯な作家がいた。あの日、彼は自殺した―彼はかけがえのない友だった」犯罪・虐殺を取材し、その本質を抉る作品を発表したジュリアンは、死の直前もロシアの殺人犯に関する資料調査に没頭していたという。執筆意欲のあった彼がなぜ死を選んだのか?親友の文芸評論家フィリップは、やがて友の周囲でかつて一人の女性が行方不明になっていたことを知る。フィリップはジュリアンの妹とともに手掛かりを追うが…。友情という名のかたちのないものをめぐる、巨匠の異色ミステリ。

才能と正義感に溢れていた親友ジュリアンの自殺。
自殺の理由が知りたくて彼の足跡をたどり始める主人公。

若かりし頃、父に勧められて二人で旅したアルゼンチン。そこでガイドをしてくれた女性の失踪。
その時からジュリアンは何かに突き動かされるかのように、人間の暗部を暴き出すような作品を生み出し続けてきた。
彼が書き進めていた陰惨な事件の記録を時系列に追いながら、ジュリアンの作品の背景や彼の行動をなぞる主人公。その旅はいつしか自分自身をも危うくするように…。

ミステリとしての意外性やどんでんがえしはないけれど、物語や人間の心の動きをじっくり読む楽しさに満ちている。
友情と信頼という不確かだけれど生きる根底にあるものをぐらぐらと揺さぶるような筆致が見事だ。 そして最近のクック作品は暗さの中に少しだけ優しさがあってそこが救い。
良かった。