りつこの読書と落語メモ

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落語家論

落語家論 (ちくま文庫)

落語家論 (ちくま文庫)

★★★★★

ホントにいいのかなあ、本なんかにしちまって。これは今さかのぼる二十年以上前に、頬輝かせて噺家になったばかりの諸君へ向けて書いたものです。師匠の姿に学んだこと、修業のいろは、楽屋の風習のすばらしさ、人との出会い、筋を通すということ、旅、酒、言葉、歳…こんなに正直に書いてしまったことを恥ずかしく思いつつ、これはあの頃の私の心意気でもあります。

実はマルケスが亡くなったことを偲んで「落ち葉」を読んでいたのだが、全編に漂う死の匂いにヤラれて呼吸困難に…。ぜいぜい。
ただでさえ弱いところに仕事で落ち込んでいたこともあり、いかんいかん!元気を出さなくちゃいかん!と大事に積んでいたこの本を。

今の小三治師匠を見ていて「こんなにも思ったことを正直に話してしまうのか」といつも驚くのだが、これを読むと若い頃からずっとそうだったんだ!と嬉しくなる。
今の小三治師匠なら何を言っても噺家たちから叩かれることはそうはないだろうが、40代の時にこんなことを言ったらさぞや周りの噺家さんたちから煙たがられただろうなぁ…。気難しいとかめんどくさいと言われたって構いやしねぇ!という小三治師匠の精神。一貫していたんだなぁ…。

自分は陰気な質でと師匠はよく言うけれど、この文章を読んでいると内側から明るさがにじみ出ていて決して陰気ではないよなぁと思う。
仕事をしている中で、こういうのは好きだ!とかこういうのは嫌いだ!とか素直に感じたり、その時は自分の手に余ったことも後から「こういうことだったのか」と納得したり、こういうことは首尾一貫して嫌いだ!とおおっぴらに言ったり。
厳しいけれどユーモアがあってデリケートで大胆で…身近にいたら煙たいだろうけど、尊敬できる「おとな」が自分の前にいてくれるというのは、なんと幸せなことなのだろう。

45歳になって自分がオジンになったとは思えんと言っていた師匠は74歳になった今も自分はおじいさんという気がしないと言っている。
自分の胸に希望や憧れがある限りは年寄にはなりえない、という小三治師匠の言葉、私も肝に銘じたい。