りつこの読書と落語メモ

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柳家三三 独演会「春」なかのZERO小ホール

4/23(水)、なかのZERO小ホールで行われた柳家三三独演会「春」に行ってきた。

・市江「近日息子」
・三三「不精床」
・三三「不孝者」
〜仲入り〜
・三三「小言幸兵衛」

市江さん「近日息子」
話題の人、市馬師匠のお弟子さん。いかにも噺家さんらしい風情なんだけど、なんか見た目の落ち着きと話し始めてからのわさわさした感じのギャップが面白い。
「近日息子」も、もともとは与太郎だけが慌て者でそれにまわりが巻き込まれていくという噺だと思うのだが、近所の人たちがああだこうだと話しているとその人たちも慌て者で与太郎っぽくなってきて、それがもうなんともいえずおかしい。
達者ではないのだろうけど、ご本人の面白みがにじみ出ていてなんともおかしくて私は好きだった。

三三師匠「不精床」
新会長、何の不足もないです、と三三師匠。唯一心配なのは、弟子が迷惑をかけないかということです。その筆頭が先ほどの市江さんです、と三三師匠。
市江さんを評して「泰然として挙動不審」はものすごく的を得ていて素晴らしい。市江さんを見ていて「なんだ、これ?」と思っていた印象を、ばっちり言葉に表してもらって、客席は大喝采。
「倅だけがバカのはずが他の人もみなバカに見えてくるというパラドックス。」にも笑った。

三三師匠の「不精床」は初めて見たのだが、小僧が破壊的にめちゃくちゃなのが面白い。
水に沸いたぼうふらを客が捨てようとすると怒鳴りつける親方。訳をきけば「ぼうふらはみんな生きている♪」には笑った。

三三師匠「不孝者」
いったん引っ込んですぐに出てきた三三師匠。花粉症で喉がカラカラになるので水を飲んできたと言って、高座に湯呑を出している師匠についての話を始めようとしていたようなのだが…。話し始めたところで舞台袖からがらがらがっしゃん!という音が。おおお、市江さんかーー!
その前に三三師匠がいかに市江さんがダメダメかという話をしていただけに客席は大爆笑。
三三師匠も調子を崩されたらしく、話そうと思っていたまくらをやめて自分が二つ目になったばかりのころの話を。

二つ目になった時、ようやく師匠の家に通うという任務から解放されたのはうれしかったのだが、同時に仕事もなくなってしまった。暇でしょうがないので自分の出番がないときもよく寄席の楽屋に遊びに行っていた。
そんな時、ある師匠が出番の時間になってもやってこなかった。後から聞けばもともと代演を頼んでいたのを協会が連絡し忘れていたということだったのだが、本人に連絡がとれないし大わらわ。 じゃお前やれ!と言われたのだが、着物も何も持っていない。
前座の着物に花緑師匠の羽織を借りて高座に出て一席やった。
二つ目になりたてなので普段はごく浅い時間にしか出たことがなかったのだが、このときはひざ前で出た。お客さんはひざ前に二つ目か?と白けたりすることなく非常にうけてくれた。
そうか、徐々に温まるとこういう空気になってこういう中で落語をしたらお客さんも笑ってくれるのだ、と実感した。
だけど自分がこの時間に出られるようになるのはいったい何年先になるのだろう、なにをどうすればあそこにいられるようになるのだろう、そう思った。
だけどそういう場を味わえたのは非常にいい経験だった、と。

三三師匠らしいエピソードでなんだかとても素敵だなぁと思った。
普段こういう話をするようなことはないけれど、たぶん市江さんのがらがらがっしゃん!でその時の気持ちを思い出して話してくれたのだろうな、と思うと、市江さんばんざい(笑)。

「不孝者」は初めて聞いた噺。
道楽者の息子にお灸を据えようと、迎えの木べえに扮して息子が遊んでいる店にやってきた旦那。 汚い部屋に通されてぬるい酒をちびちびやっていると、そこに間違って入ってきたのが、昔贔屓にしていた芸者。商売が立ちいかなくなった時に人に間に入ってもらって手切れ金を渡して縁を切っていたのだが、実は気になっていたのだ、という旦那。
女に今は男がいるのかとしきりに気にして聞くと、あなたの後にはおりません、という答え。
昔は道楽者だったんだろうなぁという旦那が今も女を前にして色気を出していく様子がなんともいえず良くて、ぞくぞくっときた。
こういう噺、三三師匠に合ってるなぁ。

三三師匠「小言幸兵衛」
「小言幸兵衛」はあまり好きな噺ではない。小言ばかり言っていて妄想の激しい幸兵衛さんにいらいらしてしまうのだ。
でも三三師匠のはたのしかった。
幸兵衛みたいな口やかましい男のおかみさんが、客に布団を出せと言われると座布団じゃなく布団を出そうとしたり、小言を言われると「はいはい」とバカにしたような返事をしたり、この長屋で独身の女と聞かれて「海苔屋のばーさん」と答えたりするのが面白い。
また明らかに言いがかりのようなことを言われている仕立て屋が「ああ、そうなりますか」ととぼけているのが面白い。
芝居調子も楽しくて、この噺はこうやって楽しむのか、ということが分かった気がした。よかった。