りつこの読書と落語メモ

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柳家小三治一門会

[落語]柳家小三治一門会 志木市民会館パルシティホール

4/20(日)、志木市民会館パルシティホールで行われた柳家小三治一門会に行ってきた。

・ろべえ「初天神
・喜多八「二番煎じ」
〜仲入り〜
・そのじ
小三治「馬の田楽」

ろべえさん「初天神
開口一番で登場のろべえさん。お辞儀をして座布団の上に座っていつものように「こちらのめくりにありますように、柳家ろべえと申しまして」と言うと、ざわつく会場。
めくりがめくられていなかったのだ。
ろべえさんの席からはめくりが見えないようで「え?なにか御不満でもありますか?」とろべえさんが言うと、「めくりめくり!」とお客さん。しばらくして「あ!めくってなかった」と気づいていったん高座を降りてめくったろべえさん。
座布団に戻ってきて「失礼しました」と頭を下げたのだが、客席も大笑いだし、本人もなかなか気持ちを建てなおせない。「あーまいったなぁ」と何度かため息をついて頭を垂れながらも、ようやく持ち直して「初天神」。

この間にぎわい座で小三治師匠の「初天神」を見てしまっているのだけれど、それとは違うけれどなかなか楽しい「初天神」。
生意気だけど金坊のかわいらしさが出ているし、おとうさんのかわいらしさも出ていて憎めない。 会場の雰囲気もとてもよくていい温まり加減だった。

喜多八師匠「二番煎じ」
自分が二つ目の頃、先輩に声をかけてもらって寄席の帰りに立ち飲みに連れて行ってもらうのがうれしかったというまくら。
酒を2杯くらい飲むと今度はつまみが欲しくなるのだが、そのころ行っていた立ち飲みやには上等なつまみなんか置いてない。瓶の中にあたりめや塩豆なんかが入っていて、現金で買うシステム。 先輩が「つまみがほしくないか」と言うと「ええ、いただきたいです」。「じゃ待ってな」と先輩がガマ口を開けるのだが、そこから金を出してあたりめを買うわけじゃなく、ガマ口の中にあたりめが入っていて「ほい、食いな」と出して配ってくれる。
「金と一緒に入ってたから銅の味がするんだけど、そんなこと気にしちゃられねぇ」に大笑い。

今日は寒いからそれをいいことにちょっと季節外れだけどと言いながら「二番煎じ」。
夜回りをしている時の寒そうな様子、バカバカしいやり取り、謡いのシーンなどしみじみ楽しい。 戻ってきてからの宴会もちょっと後ろめたくてだけど酒がまわってきて機嫌がよくなってきて実に楽しい。
まくらからのつながりもとても良くて楽しい高座だった。

小三治師匠「馬の田楽」 出てくるなり、今日はこれと言ってお話しすることもないんですと言う小三治師匠。
そう言いながらも、北海道を噺家仲間でバイクでまわりながら落語会をしていた時の話。
ある時ずーっと走っているのにも飽きてきて何か違うことをしようじゃないかということになり、とある牧場でロッジを借りて3泊ほどして乗馬を教わった。
馬っていうのはとてもデリケートで臆病な動物なのでこちらが怖がっているとそれを敏感に感じとって馬も神経質になる。
最初のうちは「おーかわいいかわいい」なんて口では言いながらも腰が引けていたのだが、練習を繰り返すうちに徐々に慣れてきて最後は一人で乗って軽く走ったりできるようになった。

東京に戻ってきたあとも、せっかく少し乗れるようになったからやらないでいるのはもったいないと小淵沢の牧場に乗りに行ったりもしていた。
何年かした時に腱鞘炎が酷くなってしまったので、バイクに乗るのはきっぱりあきらめた。それでそれまではバイクで回った北海道を車で回ることになった。
バイクに乗らない喜多八をそれまで北海道に連れて行くことはなかったのだが、車になったので初めて連れて行った。
前にお世話になった牧場を訪ねてまた馬に乗らせてもらうことにしたのだが、喜多八が試し乗りをしたら牧場主が「ああ、あんたは全然他の人とレベルが違うから、こっちに乗りなさい」と言う。 何かと思えば、実は喜多八は学習院大学馬術部出身。連れて行くまでそんなことは聞いたこともなかったのだが、実はそうだったんですよ。

そう言ったあとに、「不愉快な野郎でしょう〜!」と言う小三治師匠に大笑い。
自分たちは初心者だからポニーよりちょっと大きめの馬に乗っていたのだが、喜多八だけはサラブレッドに乗ることに。
いったいどんなもんなんだろうとみんなで注目してみていると、いつもの通り背中を曲げてなんだかとても陰気な形で馬に乗っている。
せっかくサラブレッドに乗ってるんだからもっと背中をピンとしてたかたか走るがいいじゃないかと思ったのだが、陰気な形でのろのろ一周する喜多八に「なんだあいつは。得意の乗馬でもあんな陰気な乗り方しかしねぇのか」。
でも後で聞いてみたら、サラブレッドというのは気性が荒くプライドも高く繊細で非常に乗るのが難しい。初めてであんなふうに乗るには実はたいした技術だったらしい。

その話のあとに、宇津井健が緒方直人に乗馬を教えているところに出くわしたことがあって、という話。それから今度は北海道のばんえい競馬の話。
どれもとても楽しい話で、話しているうちにどんどん面白いことを思い出すようで、最初「これといってお話することはないんです」と言っていたわりに、まくらもたっぷりでとても楽しかった。 そんなまくらから「馬の田楽」。これがもうもうとても素晴らしかったのだ。
まくらでたっぷり馬の話を聞いているので、馬のリアルな姿が目の前に浮かんでくる。

のどかな田舎の山道を馬を探して歩き回る馬方。出会う村人に馬を見なかったか?と尋ねるのだが、みな呑気で受け答えがずれていて、やきもきする馬方との対比がひたすらおかしい。
ただそれだけの噺なのに、なんともおかしくてじんわりあたたかくてとてもよかった。
いいものを見られた。来てよかった。そんな想いで会場をあとにした。