りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

金色機械

金色機械

金色機械

★★★★★

触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。

面白かった!ページをめくる手が止まらず、でもこの世界に長く留まっていたくて、読み終わりたくなかった。

物語は熊悟朗という大遊郭の創業者の元に遊女になりたいとやってきた女遥香に会うところから始まる。
器量がよくて聡明そうなこの女がなぜ遊女に?と疑問を抱く熊悟朗。話しているこの娘から二度も火花を感じた。熊悟朗には、己に危害をもららそうとする人間が近づくと、その人間から黒い霧が湧いているのが見える、心眼を持っているのである。
そうと聞くと、それならば私の話を聞いていただけますか、と遥香も身の上話を始める。遥香も熊悟朗と負けず劣らぬ不思議な力を持っていたのである。

魅力的だけれど生き延びるためには人を殺すこともためらわない登場人物たち。
その行動は善悪では計れない。なぜなら置かれている状況によって悪が善になることだってあるから。
まずは何よりも生き延びることが大事なのだ。

そんな中、金色様の圧倒的な存在感が救いだ。しかもこの神様とってもチャーミング。
最初はただただ不気味な存在でしかなかった金色様が、物語が進むにつれて登場人物たちをつなぐ役割を果たしてくるのが面白い。

「和物」には苦手意識があって(日本文学科のくせに!)腰が引けながら読んだのだが、読んでいるうちにこの時代だからこの世界観だから一つのファンタジーとして楽しめたのだな、と納得。
物語を読む楽しさがぎゅっと詰まってる素晴らしい小説だった。