りつこの読書と落語メモ

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トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白

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トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白 (ちくま文庫)

トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白 (ちくま文庫)

★★★★

ムーミン作家トーベ・ヤンソンは、じつは子供のこだわりと大人のユーモアやペーソスがない交ぜになった味わい深い小説やエッセイの作者でもある。多くの名作短篇のなかから、明るく楽しい作品を編んだ「トーベ・ヤンソン短篇集」に対し、本書はいわばそのダークサイド。シニカルでいて愛に溢れた独特の作品群は、気むずかしく気位が高い老人のよう。まさにヤンソンの本領が発揮された一冊。

一筋縄ではいかないけれど優しさや繊細さが伝わってくる作品たち。

「夏の子ども」
フレドリクソン一家が一夏預かることになったエリスという少年。上質の服を着てやってきた都会の少年エリスは、やたらと環境汚染や飢饉等の世界で起きている悲惨な出来事を言い募り、一家をうんざりさせる。
年が近いという理由でエリスを押し付けられたトムは心底エリスにうんざりするのだが、エリスは意外にもトムを尊敬し好意を持つ。
そんな中あまりにも家の雰囲気が悪くなっているので気分を変えようじゃないか!と、父は島の灯台の巡回の仕事に子供たちを連れて行くことにする。初めて訪れた島に珍しくはしゃぐエリス。トムとエリスを島に残し、下の子二人を連れて灯台に出かけて行った父がいつまでたっても戻って来ず、残された二人は…。

トムでないと書けないんじゃないかと思うような描写があちこちにあり、子ども時代の不自由さとわけのわからない不安感、何かに守られている感じが伝わってきて、なんとも甘酸っぱい気持ちになる。
ムーミンを子ども向けの作品とは思わないのだが、やはりこの人は子どもに非常に近いところにいる人なのだな、と感じた。

寂しさや老いさえも楽しんでいるような「クララからの手紙」もいい。
いかにも芸術家らしい孤独と解放が描かれた「黒と白」も好きだ。
エドワード・ゴーリーヤンソンは実際にはどんな交流があったのか、知りたくなる。

ヤンソン、もっと読みたい!