りつこの読書と落語メモ

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もう一度

もう一度 (新潮クレスト・ブックス)

もう一度 (新潮クレスト・ブックス)

★★★

昏睡状態から目覚めた「僕」は、自分が事故で記憶の大半を失ったことを知る。「事故について何も語らないこと」を条件に巨額の示談金を得た彼は、広大な土地を買い上げ、大勢の役者を雇い、執拗に練習を繰り返して、おぼろげな過去を忠実に再現しようと試みる―。滑稽にして不可解、それでいて切ない。各国で賞賛を浴びた異色の話題作。

疾走感のある物語で読んでいるこちらも何者かに追いかけられているように必死こいて読んでしまった。
何かの事故に巻き込まれ記憶の大半を失ってしまった主人公。手術やリハビリを繰り返してどうにか普通に暮らせるようになったのだが、それ以来自分がリアルに生きている感覚が得られない。
事故について黙秘することを条件に巨大な示談金を得た彼は、その金を使って自分の記憶に残っているシーンの復元を始める。

記憶の再演にとりつかれる余り、どんどん狂気がすすんでいく主人公。その狂気は彼の記憶の再演を全面的に助けるナズをも取り込んでいく。
巨額の金とナズの頭脳と行動力の限りを尽くす主人公は、たがが外れて幸福そうにも見えるのだが、破滅へと向かっているのが目に見えていて、読んでいてそらおそら恐ろしくなる。
コンピューターがクラッシュするかのように壊れたナズの姿がとても印象的で恐ろしい。

さぁいっしょに笑おうぜと物語は呼び掛けてくるのだが、まるで笑えなかった。ぞくっ。