りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ディア・ライフ

ディア・ライフ (新潮クレスト・ブックス)

ディア・ライフ (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

キスしようかと迷ったけれどしなかった、と言い、家まで送ってくれたジャーナリストに心を奪われ、幼子を連れてトロントをめざす女性詩人。片田舎の病院に新米教師として赴任した女の、ベテラン医師との婚約の顛末。父親が雇った既婚の建築家と深い仲になった娘と、その後の長い歳月。第二次大戦から帰還した若い兵士が、列車から飛び降りた土地で始めた新しい暮らし。そして作家自身が“フィナーレ”と銘打ち、実人生を語る作品と位置づける「目」「夜」「声」「ディア・ライフ」の四篇。引退を表明したアリス・マンローが、人生の瞬間を眩いほど鮮やかに描きだした、まさに名人の手になる最新にして最後の短篇集。

マンローの小説は噛み砕くのに時間がかかる。
短い物語の中で登場人物が突然思わぬ行動をとったり大変な出来事がさらっと一文で描かれていたりするので、ぼんやり読んでいると置いていかれてしまう。
そしてどの物語も甘くない。感傷的なところが微塵もない。
主人公のとる行動は、時に残酷に感じてしまうのだがけれど、生きるということは何かしらを捨て誰かを蔑ろにしていくことなのかもしれないなぁ…と思ったりもする。

「ドリー」の最後の一文に痺れ、「ディア・ライフ」が沁みた。
原文で読めればなぁ…。