りつこの読書と落語メモ

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いにしえの光

いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)

いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

撮影現場から姿を消した人気女優とあとを追う老俳優の、奇妙な逃避行。男の脳裏によみがえる、少年時代の禁断の恋。いくつかの曖昧な記憶が、思いがけず新しい像を結ぶ―。思い出すたびに色合いを変える、遠い日の禁断の恋の記憶。ブッカー賞フランツ・カフカ賞受賞作家による最新長篇。

舞台俳優だった「わたし」は、舞台を引退し妻とふたりで静かに暮らしている。
不安定だった一人娘は自殺し、娘がなぜ自殺したのか、親としてしてあげられたことはなかったのだろうかという後悔が常についてまわる。
娘の夢を見て真夜中に歩き回る妻を気遣いながらも、想いは初恋の女性・ミセスグレイとの甘くて苦い情事へ。
そんな「わたし」のもとへ映画出演のオファーが舞い込む。今をときめく人気女優との共演に戸惑いながらも現場へ向かう「わたし」。

物語の中心になるのは、「わたし」が語るミセスグレイとの情事。彼女は親友の母親だった。
当時見えていたもの、見えなかったもの、そして何度も思いだすうちに改変されていく記憶。
終わりが想像できるだけに読み進めるのが辛かったのだが、最後に明かされる事実に驚くとともに、救われた気持ちになる。

少年の側から見れば醜悪にも思えた体験も、最後には美しい愛の記憶になるのだろうか。
登場人物に共感はできないのだが、読み終わってなんともいえない感動が胸に残る作品。
とてもよかった。