りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

世界の果ての庭 (ショート・ストーリーズ)

世界の果ての庭―ショート・ストーリーズ

世界の果ての庭―ショート・ストーリーズ

★★★★★

イギリスの庭園と江戸の辻斬りと脱走兵と若くなる病気にかかった母と大人の恋と謎の言葉…。前代未聞の仕掛けに、選考委員の椎名誠氏は「ハメラレタ」と、小谷真理氏は「アヴァンポップでお洒落な現代小説の誕生」と絶讃。幻想怪奇小説の翻訳・紹介で知られる著者の満を持しての創作デビュー!第14回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。

好きだ!

幾つかの話が交互に語られる。
・作家のリコがスマイスというアメリカ人と出会い進行していく話
・ある日出て行った母がふいに戻ってきてどんどん若くなっていく話
・江戸時代の辻斬りの話
・庭園を研究する話
・収容所を脱走した祖父が不思議な空間に迷い込んだ話
・スマイスが研究している皆川家の話

話と話は時代も違うし交差することはないのだが、「謎」の部分で重なりあっているような気がする。
説明できない現象や人間の行動は、祖父が迷い込んだ空間に時折現れる「影」のようなもので、それに飲み込まれてしまったらなすすべもない。

計算して作られた庭にできる光と影のように、私たちも何物かに操られているのだろうか。あるいは謎は謎そのものでしかないのか。
そういう意味では私たちのリアルな日常も身近な人たちも謎に満ちている。自分自身のことだって何もかもわかっているわけではないのだから。

はっきりした答えはなく読者の想像に任せるような展開がとても好みだった。