りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

らくご街道 雲助五拾三次之内 江戸前

10/16(水)、日本橋劇場で行われた「らくご街道 雲助五拾三次之内 江戸前」に行ってきた。
毎月行われているこの公演、雲助師匠をたっぷり堪能できて大満足の会なので、できる限り毎回行くようにしている。

・柳亭市助「金明竹
五街道雲助「庚申待ち」
〜仲入り〜
五街道雲助「三井の大黒」

この日も台風だったのでお客さんがいらっしゃれるか心配でした、という雲助師匠。
というのは、自分が結構台風にあたってしまうもんですから、と。
大阪で独演会があったんだけどその日も台風で。前からそうは聞いていたけどどうせ逸れるだろうと鷹をくくっていた。
昼頃出かければいいだろうと思っていたのだが、テレビをみたら台風が名古屋を直撃というニュース。「やばいじゃん」と思い慌てて出て行ったのだが新幹線は止まっていた。
だったら東海道線を乗り継いで…と思ったがそれも止まってる。結局主催者に電話をかけて1週間延期にしてもらった。
聞けばその日のお昼までに大阪に着いた新幹線は3本だけ。でもそれに乗って大阪に見に来てくれたお客様がいたらしい。申し訳ないことをした。
そんなことがあったから今日もひょっとして直撃で中止になるかもしれないと心配していた。 中止になるんだったら稽古をすることもないかな…と。
雲助師匠が「じゃん」と言うのが意外すぎて笑った〜。

雲助師匠の「庚申待ち」。
落語には東京と大阪で同じ噺があって、でも大阪の方から入ってくるとそちらのほうが面白いということで東京版の方がやられなくなる、ということがある。
なんだかそれも悔しいじゃないか、ということで本日はそういう噺をやります。
間の身体には三尸 (さんし) の虫が住んでいるのだが、庚申の日にはその虫が天上へ行って人間の悪口を言う。だからその日は寝ずにいて虫がからだから出ないように見張りをする、という風習があった。
日本橋馬喰町の旅籠で村の人たちが集まって庚申待ち。寝ないようにみんなで面白い話をしようじゃないか、ということで指名された者が話を披露する。これがなんともいえず楽しい。

夜中に歩いていると茶飯屋の流しが来た。ちょうどお腹も空いたしいっぱいもらおうと近づいてみると、そこに現れたのが武士で、茶飯屋の親父にいきなり刀を向けて斬りつけた。
これはなんだ!!というと、「これが茶飯斬り(試し斬り)」。

次に指名された男は「わしは田舎者だから」と言いながら、村で一番の美人が出世した話。 これも最後に「女ムジナ汁を食って玉の輿に乗る」とオチがつく。
その次に指名された侍の話も「また(太鼓)モチをはぎ取り、座頭(砂糖)を付けて食べた」とオチがつく。
このそれぞれの話が何とも言えず楽しい。語りが上手な雲助師匠、途中までおどろおどろしいだけに、最後のところでオチがつくのがなんともバカバカしくて楽しい。こういう噺、大好きだ。いつまでも男たちのバカバカしい話を聞いていたくなる。

そして指名されたくまさん。ほらくまと呼ばれるほどの大法螺ふきなのだが、自分の懺悔話を聞いてくれ、といって話し始めたのが、あるとき文無しになって困って爺さんを殺して金を奪った、という話。
またくまのホラが始まったよと聞いてる者たちは本気にとらないのだが、隣に泊まっていた侍が宿屋の者を呼びつけて「隣の話を聞いていたが、ここに自分の親父を殺した仇が泊まっていることがわかった。敵討ちをするから明日の朝まで縛り付けておけ」という。
そこを聞いて初めてこれは「宿屋の仇討」の江戸版なのかと気づいた。

なるほど、確かに「宿屋の仇討」の方が3人組のお調子者のはしゃぎぶりが楽しくて笑いはとれる。
でもこちらはこちらでそれぞれが語る話のバカバカしさが味があって楽しい。これから寄席などでも雲助師匠がかけてくれるといいな、と思う。

仲入後は雲助師匠の「三井の大黒」。
なんでも23年ぶりにかけたらしく、雲助師匠にしたら珍しく言いよどむようなところもあったけれど、そんなことまるで気にならないくらい面白かった。
甚五郎が自分の正体をかくして江戸で棟梁・政五郎のところに身を寄せるのだが、何かとせっかちな江戸の仕事の仕方と合わずなかなか本領発揮できない。
まさか名人甚五郎だとは気づかず面倒を見る政五郎とどこまでもマイペースな甚五郎のやりとりが楽しい。
また雲助師匠には珍しくはっちゃけたくすぐり(甚五郎の作った大黒様への謝礼の1つに人気のパンケーキ。余分に持ってきた20両は最近自伝を出した噺家へのご祝儀。)も入って笑った笑った。
甚五郎も素敵だけど政五郎の人間の大きさがなんとも魅力的。
ゆったりした語りを堪能した夜だった。

日記の方にも書いたけど、終演後雲助師匠のポスターを剥がして持って帰る人がいて羨ましかった〜。
ポスターはもらわなかったけど、前から欲しかった雲助一門のブロマイドを買ってしまった。机の前に飾ったら長女に「こ、これは…」と絶句されちゃった。ぐへへ。