りつこの読書と落語メモ

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柳家小三治独演会 川崎市麻生市民会館

10/15(火)、川崎市麻生市民会館で行われた柳家小三治独演会に行ってきた。
台風の影響で激しい風雨。
地図で見ると駅からすぐのはずなのだが方向音痴なのでどちらの方向に行けばいいのかわからない。
駅前の地図を見ると、まっすぐ行けばホールがあるようなのだが、こんな名前じゃないよなぁ。
同じように迷っている老夫婦、若い人ならわかるでしょ?とばかりに私に期待の眼差しを向けてくるのだが、私もとんとだめなんです〜。
ひぃひぃ言いながらそれでもプリントアウトした地図によれば左の方角っぽいよな?と歩いていったらあったあった!
迷ったせいで無駄にびしょ濡れになってしまった。やれやれ。

柳家禽太夫「転失気」
柳家小三治「野ざらし」
〜仲入り〜
柳家小三治「一眼国」

禽太夫師匠「転失気」。
開口一番は禽太夫師匠。
小三治師匠の独演会だと、小三治一門のお弟子さん(真打)が開口一番をつとめることが多いのは、前座さんは緊張しすぎちゃうからなんだろうか。
独演会の開口一番、一門会、寄席と通って、ついにこれで小三治師匠のお弟子さんは全員見たぞ〜。
明るくて楽しい高座で好きだな、禽太夫師匠。テンポがいいからだろうか、無理がなくて自然に笑ってしまう。

小三治師匠「野ざらし」。
「こんな天気の中、本当にまあよくおいでくださいました」と小三治師匠。
「みなさまがたもそうですけど、私もそうなわけでして」。

麻生会館といえば柿。昨年のこの会に来た人はご存知でしょうが、そうでない方もいらっしゃるでしょうから少しお話申し上げますが。
北新宿出身の小三治師匠。子どもの頃は祭りの神輿が出るといえば参加して山車を引いたりしたもんですが、あれは山車を引くのはたいして楽しくない。お囃子が楽しいかというと別にそれも楽しくない。じゃ何が楽しみかといえば最後にもらえるおやつ。あれが目当てだった。
袋の中に小さい柿が5,6個入っていてそれがうまいのなんの。小ぶりの柿で形も揃ってなければ色も黒っぽいところがあったりしたけれど、とにかく美味かった。
その柿が「禅寺丸柿」といってこのあたりの名産品だと知ったのは最近のこと。
それで昨年はここでの落語会の時にその柿を手に入れられるかしらと期待して来たんだけど、時期が少しずれていたせいで手に入れることができなかった。
今年こそはと思って少し早めに会場入りしてこのあたりの八百屋を探してみようかしらと思っていたら、この天気。しかも道路が酷く渋滞してしまった。
途中トイレを借りたコンビニでもしかして売ってたりしないかと思ったら、売っていたのは三重の柿。なぜここまで来て三重の柿を買わなきゃならないのか。
がっかりして会場に着いてたら、係りの人が「お待ちしてました」と出迎えてくれて、「これをどうぞ」と紙袋を手渡してくれた。お!と思って開けてみたらなんとこれがね。

ここまで言って袖の方を見て「おい、持ってきて」。
そう言われて禽太夫師匠がニコニコしながら紙袋を二つ持ってきて、どっと沸く会場。
紙袋を渡して下がろうとする禽太夫師匠に小三治師匠が「おい、お前の転失気を久しぶりに聞いたけど、よかったよ。面白かった。」と。
言われた禽太夫師匠がうれしそうに頭を下げて降りていった。

「いやね。あいつの落語を久しぶりに聞きましたけどね。ひどかったんですよ。それはもうね。うけたくてうけたくてがちゃがちゃがちゃがちゃしてて。ひどいもんだった。それが久しぶりに聞いたら良くなってたなぁ。いや、ほんと。わからないもんですなぁ。」

真打になった師匠にも小言を言ったり褒めたりするんだなぁ、小三治師匠は。
だからこそ煙たい存在だろうけれど、こういうところが本当に素敵だなぁ、と見ている方はたまらない。

「落語っていうのはね、無理に笑わそうとするようなものじゃないんです。登場人物が生き生き動き出して聞いている人がその中に引き込まれていって、そこで思わず笑うつもりじゃなかったけど、ぷっと思わず笑ってしまって、そうしたらもうなんだかおかしくなってきて、笑いが止まらなくなってしまって。私も素人の時分に落語を見に行ってそういう体験をしたもんです。そうでなきゃいけないのに、今はやたらめったら笑わそうとする。テレビのお笑い番組なんかもそう。安っぽいその場限りの笑いに終始してる。
ほんとはこういうことは言わないほうがいいんです。だから私も言わないようにしてた。でも最近はそういうことを言ってくれる人がいなくなっちゃった。みんな若い人に嫌われたくなくて言わない。
だから私はいうようにしてるんです。先が短い、っていうのもありますからね」とにやり。

また柿の話に戻って袋に入っていた説明書を読んだり、お客さんで楽屋に柿を届けてくれた人がいたとその紹介をしたり。
説明書を読む時にふところから老眼鏡を取り出したんだけど、それがオレンジ色の派手なメガネ。つけるとまるでDEVOのようでなんともチャーミング。
この日の小三治師匠はなんかご機嫌で元気でまくらたっぷりで本当に見ていて嬉しくなった。

そして趣味にもいろいろありますね、と言って「野ざらし」へ。
小三治師匠の「野ざらし」、最高に好きだ。見たのはこれで3回目だけど、浮かれ加減がたまらなくおかしくて、特別なくすぐりなんか一つもないのに、笑えて笑えて幸せな気持ちに。

仲入後はまくらなしで「一眼国」。
前によみうりホールで見たことがあったのだが、今回は席が近かったのであの時より小三治師匠の表情が間近で見られてよかった…。
六部から話を聞いた香具師が言われた通りに訪ねて行って原っぱに到着するところ。
大げさな身振りをするわけではないのに目の前に大きな原っぱが広がって、鳥肌がぞわり…。
前半の楽しいまくらと明るい「野ざらし」、後半の不思議な「一眼国」。素晴らしかった。