りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

人形町らくだ亭 第五十回特別公演

10/2(水)、日本橋公会堂で行われた「人形町らくだ亭 第五十回特別公演」に行ってきた。
特別公演ということで、そうそうたるメンバー。あまり宣伝をしていなかったけど会場はほぼ満員だった。

・春風亭一朝「魂の入替え」
柳家さん喬「片棒」
五街道雲助厩火事
〜仲入り〜
古今亭志ん輔「紙入れ」
柳家小満ん「二十四孝」

開演時間の前に開口一番だったので、前座さんを見そびれた。

一朝師匠「魂の入替え」。
まくらでは、扇橋師匠を頭に旅に出た時の話。お金がなかったから安いビジネスホテルに泊まった。高座を終えてみんなでよれよれになりながら着いてみたら、古びたホテル。一目見るなり扇橋師匠が「これはまずいよ。出るよ。やめよう。」と言う。
しかし時間も遅いしお金もないし周りに他にホテルもないしここに泊まるしかない、ということになる。
部屋に入った扇橋師匠が「ああ、この壁、嫌だなぁ。これは出るよ。いるよ」と言う。 「いますか?」と聞くと「うん、いる」。
「見えるんですか?」と聞くと「うん、見える」。
自分は霊感が強いのだ、と言う師匠に、なんだか気味が悪いなぁ嫌だなぁと思いながら自分の部屋に戻った。
真夜中になって自分の部屋のドアをたたく音で目が覚めた。誰かと思えば扇橋師匠。
「大変だ。おれの部屋に来てくれ」と言うので、ついに出なすったか!!と怯えながら入ってみると、壁ではなく天井を指さす扇橋師匠。
おそるおそる見てみると、そこには幽霊が…ではなく、ものすごい雨漏り。なんだ、大変だっていうのは幽霊じゃなくて雨漏りだったのか、と。

そんなまくらから「魂の入替え」。
初めて聞いたけれど、私の好きなシュールな噺。 
鳶の頭が先生の家で酒をご馳走になって泊まる。寝ている間に二人の魂がふわふわ〜っと出て行って散歩。まだ飲み足りないねと魂が仲良く吉原に向かうのだが、そこで頭の町内が火事になったと聞いて、慌てて家に戻る。
先生はゆっくり戻ってください、自分は急いで帰りますと、先生の家に戻った頭。
ふと見れば魂の抜けた先生がぐうぐう寝ている。入れ歯をはずしてある口元が面白いと覗き込むと、そのままひゅるるるっと魂が先生のからだに入ってしまう。
戻ってきた先生の魂は入る先がないので仕方なく頭の身体へ。

大工の弟分がやってきて「大変です、火事です」と頭を起こすのだが、中身が先生だから鷹揚としている。
どうしたんだ、頭、寝ぼけてるのか?!仕方ない、先生を起こして話をしてもらおうと先生を起こすと、中身は頭なので「冗談いっちゃいけねぇ!」とやたらと威勢がいい。
一朝師匠のキップの良さが気持ちいい、楽しい高座。

さん喬師匠の「片棒」。
以前、百栄師匠で見たことがあったのだが、やはりこういう噺はベテランの方が合ってるのかも。
さん喬師匠の「片棒」はべらぼうに面白かった。
まずは長男の考えたお葬式。「通夜は二日、歌い狂い踊り狂います」と涼しい顔で言うのがおかしい。
そして次男の考えたお葬式。木遣りに神輿に花火にってまるでお祭り。
お父さんそっくりの木彫りの人形を作ってそいつを山車に乗せましょう。人形がそろばん持って金勘定。時々顔をかくかくさせて周りににらみをきかせる。そのかくかくさせた仕草がばかばかしいやらおかしいやら。
花火を見上げてうっとりする女が妙に色っぽくてまたおかしい。

雲助師匠の「厩火事」。
この噺、あんまり好きじゃないなーと思っていたのだけれど、雲助師匠のお崎さんがかわいくて憎めなくて、また女房を働かせて家でぐだぐだしている旦那も魅力があって、初めてこの噺を聞いて面白いと思った。
最初は夫婦喧嘩をして今度こそ別れたいと言ってたくせに、相談した大家に「ああ、別れろ別れろ」と旦那の悪口を言われると、「あらぁ。そうおっしゃいますけど」と旦那ののろけを言いだすお崎さん。
大家の話をいちいちまぜっかえすのも、リズムがよくて楽しい。

小満ん師匠の「二十四孝」。
親不孝者の八さんは家で気に入らないことがあると女房は殴るわ、自分の母親は足蹴にするわ。
「ばばあを蹴ればかかあがかばう。かかあを殴ればばばあがかばう。あの二人ひょっとするとできてるんじゃねぇか」
親を蹴ったと聞いて大家さんが唐に伝わる「二十四孝」という孝行をした人物の話を八さんに聞かせて親孝行するように促す。
ほとんどの場面はこの大家さんと八さんの会話という地味〜な噺。
大家さんの話をまぜっかえす八さん。この会話のリズムが楽しくて言ってることは酷いのに聞いていると楽しくなってくる。

親孝行したら小遣いをくれると大家に言われて家に帰ってきた八さん。
それまで「ばばあ」と呼んでいた母親のことを急に「お母上」と呼んで、二十四孝と同じようにやろうとするのだが、基本的なことを間違えていたり、母親にも「鯉なんか食いたくない」「歯が悪いから竹の子はくえねぇ」といちいち逆らわれる。
「なんだよ。唐のばばあは何でも食ったぞ。だから親孝行ができるんじゃねぇか」

ところどころ聞き取れなかったりわからないところもあったけど、それも含めて楽しい高座。サゲを言ってにっこり笑う姿がなんともいえずかっこいい。小満ん師匠、素敵だ。