りつこの読書と落語メモ

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柳家小三治独演会 大田区民センターアプリコ

9/9(月)、大田区民センターアプリコで行われた柳家小三治独演会に行ってきた。

・ろべえ「お菊の皿
小三治金明竹
〜仲入り〜
小三治「かんしゃく」

開口一番はろべえさん。
オリンピック開催が決まりましたねと言って小話をいくつか。
ビミョーな内容で拍手もパラパラだったんだけど1つでやめずにいくつか披露していて「まだやるのかい」とちょっと笑ってしまったのだが、「これを小三治師匠の前でやる勇気を買っていただきたい」で大爆笑。

そして噺は「お菊の皿」だったんだけど、これがとても面白かったのだ。
前半部分を本気で怖〜くやるので、この噺自体を知らない人はきっとこれは怪談話だと思って聞いていたのではないかしらん。
それがお菊人気が盛り上がってきて大興業になっていって…という展開になるので、そのギャップでまず笑ってしまう。
そして大興業になってからの弾けっぷりが激しいので、それでまた大笑い。

最初の小話で「なにもの??」となっていた会場が大爆笑に包まれて凄かった。
ろべえさんはこれで2回目なのだが、前よりももっと面白くなっていて見事だった。

そして出てきた小三治師匠。
珍しく「今袖で見ていたのですが…」と言ってからしばらく黙って「…うるさい…」で大爆笑。
「あれはろべえといって喜多八の弟子でして、なので私にとったら孫弟子にあたるのですが。なんといっても喜多八は陰気でねぇ。昔からほんとに陰気で陰気で…それが悩みの種で私もよくそのことで小言を言ったものですが。その喜多八の弟子だからどれだけ陰気だろうと思ったらあんなですから。わからないですね」。

そのあと、喜多八師匠の修業時代の話。
とにかくそんなふうに陰気じゃいけない、としょっちゅう小言を言っていたのだが、ある日台所で小言を言っていた時のこと。
いつも小言を言うと喜多八は下を向いてぽろぽろと泣き出してしまう。泣かれてしまうとそれ以上何も言えなくなる。
だけど大事な弟子のことだからあきらめるわけにもいかない。
するとそれを聞いていたおかみさんが黙っていられなくなったらしく口を挟んできた。
「あのね、この子は根っから陰気なの。そういう性分なの。だからそれを変えろっていっても無理なのよ。もういっそこのまま陰気でいけばいいじゃない」と。

うちのかみさんはかみさんでとてもいろいろ人間的に問題があって私はもうそういうのはあきらめてやってきたわけですけど、弟子のことはあきらめちゃいけないと思っていつもがみがみ言ってきたんです。でもかみさんにそう言われて、ああ、そうかもしれねぇなあと思いましてね。「よしわかった。お前はこれから陰気で行け。もうとことん陰気にやってみろ」と言ったんです。
そうしたらね、なんかしばらくしてから見てみると、なんかいい味が出てきているんです。
たぶんそれまでは私にいつも怒られていたから本人も「自分は陰気だ。これじゃだめだ」とさらに落ち込んで陰気になっていたんですね。 それが「陰気でいけ」と言われたことで吹っ切れたんでしょうかね。

「そんな陰気な喜多八の弟子ですからね、ろべえは」とまたろべえさんに話が戻って、「でもさっきのは…面白くなってましたね。」と。 うおおおおー小三治師匠が褒めたよーーー。
「ま、あんまり褒めると本人すぐにいい気になりますからこのへんで」と言ってたけど、なんかちょっと感動してしまった。
聞いてる私たちが感動したくらいだから、ろべえさんはうれしかっただろうなぁ…。

また、自身が圓生師匠から「火事息子」を教わった時の話も面白かった。細かいところを丁寧に教えてくれる圓生師匠。それに対して小さんはいつでも「登場人物の気持ちになれ」と言うだけ。何を聞いても「なんでもいいんだ」「了見になれ」だけ。
それじゃわからないよ、と当時は思ったけれど、今になってその教えが沁みてくる。
なんか師匠話っていいなぁ…。

そして噺は「金明竹」。
これがもう本当に良かったのだ。なんていうかもういちいち面白いの。大げさにやるわけでもないし、くすぐりをたくさん入れるわけでもないのに。
外に水を撒いていて通りの人にかかりそうになって謝るところ。
天井から水が落ちてきて「あれぇ?」と上を向くところ。
ちょっと顔をしかめたり上を向いただけでなんとも言えずおかしい。

そして言いたての面白さとそれを聞いて困ってしまうおかみさんの面白さ。
途中でちょっと言い間違えたりしてもそれがまた面白い。
おかみさんがかわいらしくて、わかっているのにいちいち全部がおかしくて笑って笑って、楽しかった。
なんかとってもいい「金明竹」を見られたなぁ…。幸せ。

仲入り後は、オリンピック開催が決まった話から。
他にやることがあるだろうに、という一言に、ああ、やっぱり同じ気持ちだったのか、とうれしくなる。
でもまあいいです。儲けになる人はおおいに儲ければいいんです。うれしい人は喜べばいい。選手はもちろんうれしいだろうし頑張ればいい。だけど日本国民が全員が心を一つにする必要なんかない。よろこばないやつがいてもいいじゃないですか。
私も本当にそう思う。
心を一つにとかそういうのキモチワルイ。

「かんしゃく」は好きな噺じゃないんだけど、小三治師匠のかんしゃくぶりがあまりにも凄くてもう笑ってしまう。
いちいち細かくて癇癪持ちが癇癪おこしているうちにさらにそれが勢いがついてもうどうしようもなくなってしまうほどの癇癪に…。
もう我慢できないと実家に帰った娘を諭す父親。夫に従えなんてさーーーと思うけれど、それでも娘を思う父の気持ちには思わずじーん…。
そして憎々しい夫がアイスクリームを出されて一口食べて「アイスクリーム好きだ」とつぶやく姿のかわいらしさよ…。もうなんでこんなにかわいいんだ。

小三治師匠、血管切れないかしらと心配になるくらいの熱演で、すばらしかった。

小三治師匠の「金明竹