りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭 8月下席昼の部

8/22(木)、末廣亭 8月下席昼の部に行ってきた。

・しあわせ「子ほめ」
・麟太郎「お菊の皿
・小猫 ものまね
・三三「金明竹
・ひな太郎「幇間腹
・勝丸 太神楽
・菊春「目黒のさんま」
・しん平「夏泥」
・アサダ二世 奇術
・雲助「堀之内」
・小満ん「あちたりこちたり」
・正楽 紙切り
・川柳 ガーコン
〜仲入り〜
・うん平「長短」
・にゃん子・金魚 漫才
・歌之介 漫談
文楽「替り目」
・小菊 俗曲
・小里ん「笠碁」

麟太郎さん「お菊の皿
麟太郎さんの「お菊の皿」興行はポイント制。DJポリスが出てきた意味がよくわからなかったけれど、面白かった。

小猫さんの物まねは本当にすごい。
おなじみのうぐいすの物まねも素晴らしいのだが、アシカと手長猿が実にすごい。途中にため息が入るとか、恥を捨てるだけではなく自分の存在も捨てる、人間であることを忘れるっていう境地に納得。感動。

三三師匠「金明竹
いつものように忙しいのまくら。売れっ子だからそれぐらい忙しいんだーほぉーとみんながため息をつくと「、になりたいな。嘘ですよ。噺家の言うことなんかまじめに聞いちゃいけません。ましてやメモなんかとらないように。観念してぼんやり聞いてください」と。
言いたて前のお客を断るところまで。最後まで聞きたかったなー。

ひな太郎師匠「幇間腹
幇間腹」は左談次師匠のを聞いたばかりなのでついつい比べてしまうのだが、ひな太郎師匠のも面白かった。やはりこの噺はたいこ持ちの調子のよいリズムがキーなのだな。

菊春師匠「目黒のさんま」
バカ殿さまぶりがちょっと気持ち悪い(失礼)。
目黒で食べたさんまに恋い焦がれて「あのながーくてくろいやつ」と手をすーっと伸ばすのがおかしい。

しん平師匠「夏泥」
まくらで、とにかく暑い、こうも暑くてふらふらしているときに、女物のひらひらしたパンティが軒先でふわっと揺れていたりすると、ふら〜と引き寄せられて盗りたくなる。これはもうしょうがないですよ、許してやってくださいよ、と。
女の人も年がいってくるとだんだん男か女かわからなくなってくる。ひげも生えてくるらしいですね。きをつけてください。
セクハラのようなあけすけなまくらに一部のお客さんは大うけ。私は面白いのとこれ以上はちょっと…というのが半々。
すると会場の空気を察したのか、「お客さんに伺います。これからどろぼうの古典落語をやるのがいいか、今みたいな話を最後までやるのがいいか。古典がいい人拍手してください」
「あー案外多いですね。じゃさっきみたいな話がいい人は挙手。あー少数派ですね。じゃ、古典にします。あのねぼくあんまりやらないんです、古典。だから下手ですよ。たいして面白くないですよ」と「夏泥」。

私は落語の方に拍手したので、「夏泥」聞けてうれしかった。
泥棒に入った先で身ぐるみはがされていく泥棒が、コワモテのしん平師匠がやるとぴったりで楽しかった。
私は与太話より落語の方がいいです。

雲助師匠「堀之内」
こういうばかばかしい噺が本当にいいんだよなぁ、雲助師匠は。
次から次へとリズムよく披露されていくこのありえないぐらいの粗忽ぶりがもう楽しい楽しい。歌を聴いているような気持ち良さ。
つぼにはまって笑いが止まらなかった。

小満ん師匠「あちたりこちたり」
銭湯に出かけた亭主が午前様。いったいどこに行っていたの?と女房に聞かれて、思い出しながら話をする。
最初は古典と思って聞いていると、タクシーが450円とか銀座は銀座でも田端銀座とか、最後に入ったのがクラブスペードってトランプみたいなお店ね、そうなんだよ入ってみたらジョーカーみたいな女が出てきてさ…あれ?なんだろ、これは新作?
午前様の亭主の話を聞くおかみさんが「まったくあんたはしょうがないね」とあきれながらもガミガミ言うでもなく、旦那の方もちょっぴり言い訳がましいのだけれど別に悪びれるでもなく淡々と話をする。
げらげら笑えるような噺ではないのだけれど、夏の夜に桶を持って出かけた旦那がいっぱいひっかけたら帰りたくなくなってあちこちぶらぶらする様子がなんとも楽しい。
終わり方もきらっと楽しくて素敵。寄席で小満ん師匠を見られるとものすごいお得感。

正楽師匠 紙切り
路面電車に森のくまさんに夏休みに。
電車といわれれば電車だけじゃなくそれを眺める親子、森のくまさんといわれれば女の子とくまがまさにばったり出会ったところ、「動き」のあるシーンを切り取るのが素晴らしい。
森のくまさんを注文した男性が、もらった紙を桟敷席の親子連れにプレゼントしたのがかっこよかった!

川柳師匠
久扇師匠との交互出演だったのだが、川柳師匠の番だったのでラッキー♪
藤圭子が死んだよって川柳師匠に教えられて驚く私たち。
高校野球の話から、春の甲子園の歴代テーマソングの話へ。まさか師匠がパフィを歌うとは…驚いた〜。

うん平師匠「長短」
単純な噺だけど好きなんだ、「長短」。前に小燕枝師匠の「長短」を見て、すっかりファンになっちゃった。
うん平師匠の「長短」も、のんびりした長さんに気短な短七さんがいちいちかーっ!っていらいらするのが楽しかった。

歌之介師匠 漫談。
私にはこの人の面白さがさっぱりわからない…。

文楽師匠「替り目」
悪人顔だけど(ひどい言いよう)、じんわりかわいくてなんとも楽しい「替り目」。
酔っぱらったおやじがしょうもないんだけどどこかかわいくて、対するおかみさんがきっぱりと厳しいんだけど優しい。楽しかった。

小里ん師匠「笠碁」
これが本当に楽しかった。
碁を打っている二人。下手さ加減も同じぐらいなのだが、ある時一人が「待った」をかけたのを、相手が「いやだめだ」と固辞したことから、大ゲンカに。
もう二度と家には来るな!
ああ、こっちから願い下げだ!

お互い意地っ張りなので仲直りもせずそのままになってしまっているのだが、雨が長く続くと退屈でしょうがない。
こういう時こそあいつと碁を打ちたいねぇ。あいつもなんだよ俺の言った言葉を真に受けて。ほんとに意地っ張りだなぁ。
あいつもきっとおれと碁を打ちたくて店先に出て来てるんじゃないか。訪ねていくのはしゃくだから、ちょっと様子を見に行ってみよう。
傘がなかったので仕方なく古笠をかぶって友人の店先へ。ちらちら横目で見ながら通り過ぎる。
それに気づいた男は「やっぱりあいつは来てくれた」と喜ぶのだが、通り過ぎて行ってしまうので「なんだよ、素直に入ってくればいいのに」。
お互い意地を張りあっているのだがとうとう我慢しきれず声をかける「やい、へぼ!」
相手も待ってましたと「へぼとはなんだ!」「よし勝負だ!」と碁盤の前へ。

もうこのおじいさん同士の意地の張り合いから、二人で碁が打ちたくて打ちたくてしょうがなくて、笠をかぶってちらちら見ながら通り過ぎていく様子、それをおいおいなんだあいつはと眺めている様子、もうまるで目の前に二人のおじいさんがいるように鮮やかで楽しい。
小里ん師匠のゆったりした口調が実に心地よくてこの空間が気持ち良くて。
とてもいいものを見られた。幸せ。

小さん師匠の「笠碁」があった!