りつこの読書と落語メモ

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コリーニ事件

コリーニ事件

コリーニ事件

★★★★★

2001年5月、ベルリン。67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、新米弁護士のライネンは気軽に国選弁護人を買ってでてしまう。だが、コリーニはどうしても殺害動機を話そうとしない。さらにライネンは被害者が少年時代の親友の祖父であることを知り…。公職と私情の狭間で苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で公訴参加代理人になり裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが、法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。コリーニを凶行に駆りたてた秘めた想い。そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。刑事事件専門の著名な弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く、圧巻の法廷劇。

小説としての面白さより、ドイツ人であり弁護士ある作者がこの作品に賭けた想いに圧倒される。
ノンフィクション?と思うようなリアルで恐ろしい短編を発表してきた作者だが、この物語を描くためにその手法を編み出したのではないかとさえ思える。

人が人を殺すこと、罪が裁かれること、裁かれないこと、色々考えさせられる。
そしてこの作品がきっかけとなって、ある法律の欠陥を再検討する動きがドイツ政府ではじまったというのが凄い。
小説が法律を動かすきっかけになるなんて素晴らしい。日本でもそんなことが起こればいいのに…。

この物語の後味はとても苦く悲しい。それは起こってしまったことは元に戻すことはできないからだ。死んだ者は生き返らないし、その死に意味は持たない。
それでもその後生きる者たちは、苦い歴史や過去に起こった過ちを知って、その後の道を少し変えていくことができる。主人公の最後の言葉(「きみはきみにふさわしく生きればいい」)が小さな光に思える。