りつこの読書と落語メモ

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死都ブリュージュ

死都ブリュージュ (岩波文庫)

死都ブリュージュ (岩波文庫)

★★★★★

沈黙と憂愁にとざされ、教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは、亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(1855‐98)が、限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界。

これはまたすごい…。
妻の死を乗り越えられずに死んだように生きている男がブリュージュに移り住む。限りなく死に近いところで生きている男とブリュージュの町が溶け合い、濃厚な死のイメージを紡ぎあう。
妻に瓜二つな悪女と出会ってしまったのはブリュージュからの贈り物だったのか、たんなる運命のいたずらか。

宗教的な色合いも濃いのに、罪の意識が希薄なのが興味深い。
登場人物たちの心の動きに深くは立ち入らない。なぜなら主役は人間ではなくブリュージュという町だから…。
「死都」と呼ばれたことをブルージュが嫌がり不名誉に感じたというのも面白い。今ならタイトルのあとに「あくまで個人の感想です」って但し書きが必要かも…?