りつこの読書と落語メモ

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神は死んだ

神は死んだ (エクス・リブリス)

神は死んだ (エクス・リブリス)

★★★★★

「神の肉」を食べたために、知性が高度に発達した犬へのインタビューをはじめ、「神の不在」がもたらす「ねじれ」の諸相に、斬新な語りとポップな感性で切り込む。全米で話題騒然の新人による、異色の9篇を収めた連作短篇集。“ニューヨーク公立図書館若獅子賞”受賞作品。

これはまた独特な作品。奇想のようなSFのようなふざけているような大真面目なような…シニカルなような文学的なような。

1話目で若きディンカ族の女に姿を変えた神が民族紛争に巻き込まれて死ぬ。
神が死んだことが世界に伝わるにつれ、人々は動揺したり自暴自棄になったり、異様な価値観が生まれたりそれを迫害する勢力があらわれたりする。「神不在」の世界を描いた連作短編。

1話目には戸惑ったのだが、読み進めるうちにどんどん楽しくなってきた。
とはいってもそこに描かれているのは楽しい世界では決してないのだが。信仰を持たない私にはこんな風に神が無力なように描かれることに「大丈夫なの?」と驚いてしまうのだが、しかしここに描かれる狂った世界は私たちのいるこの世界とそんなに大きな違いはなくて、それが恐ろしい。

現実には起こりえない出来事と、今この現実でも起こりうる出来事と、その中間にあるような出来事を描いて、「神が死んだからこれからますます世界はおかしなことになるのか」と思わせる。
ささやかな日常、人間に心に宿る憎しみや怒りを丁寧に描きながら、SF奇想的な世界を見せる。
なんとも心憎い短編集だ。