エロマンガ島の三人
- 作者: 長嶋有
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2007/05/31
- メディア: 単行本
- クリック: 49回
- この商品を含むブログ (66件) を見る
- 作者: 長嶋有
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/07/09
- メディア: 文庫
- クリック: 45回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
エロマンガ島でエロ漫画を読んでくる…?およそありえない取材に出向いた編集者たちの、実話をもとにした南国小説。温かくて、おかしくて、なのに切ない二泊三日。表題作のほか、初のSF小説、奇想天外なゴルフ小説、官能小説に珠玉の書き下ろし新作「青色LED」も加え、第一回大江賞作家が放つ異色作品集。
面白い!そして予想外に少しじーんときた。
エロマンガ島でエロマンガを読もう!というおバカな企画が通りヘリコプターで島に向かう男三人。なんてバカバカしいと思ったら実話をもとにしたフィクションだというじゃないか。
ゲーム雑誌編集者の佐藤、同じく編集者で根っからのオタクの久保田、そして言いだしっぺである井川が行けなくなったため急きょ代理で参加することになった日置。
デブで怖がりで甲高い声で文句ばかり言う久保田と、島に来るのにスーツ姿で何か訳ありげな日置。
佐藤自身は付き合っている彼女にエロマンガ島に行くと告げると思いのほか冷ややかな反応が返ってきたことが気になっている。
珍しい日本人の観光客ということで歓迎ムードの島の人たち。
鬱蒼と茂るジャングル、美しい海、にこにことなついてくる子どもたちに、いつしか男たちは本来の目的や置いてきた仕事や恋人のことも忘れて、解き放たれるが…。
人を食ったようなタイトルだが、むさくるしい男たちが一瞬現実を忘れて我を忘れかけるのが非常にリアルで身につまされてちょっとぐっとくる。
そして何か事情がありそうな日置が、一瞬行方をくらましかけたのが思い直したように戻ってくるところの描写がとてもいい。
最終話「青色LED」は1話目の「エロマンガ島の三人」の続編で、日置のことが語られる。
全てが明かされるわけではないのだが、ああそうだったのか…と腑に落ちる。
帯の「まさかの!大江賞受賞後初の作品集はコレです!※この作品は受賞作ではありません。」という作者本人談が妙に笑える。
やっぱり好きだな、長嶋有。