それを愛とまちがえるから
- 作者: 井上荒野
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/01/24
- メディア: 単行本
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気がつけば、しなくなっていた。心ならずもつのっていく妻と夫の鬱屈。微笑みより苛立ちが多くなり楽しみが義務になりかわって―切実ゆえに笑いを誘う大人の辛口コメディ。
結婚して15年になる子どものいない夫婦。
伽耶は、自分が一生懸命作った料理にもせっかく調べてわざわざ行ったお店にも何の興味も持たない夫への苛立ちを募らせている。
匠は伽耶と二人で過ごす休日に息苦しさを感じている。
ある日伽耶は匠に言う「あなた、恋人がいるでしょう」。
相変わらず登場人物の誰にも共感できない気持ちの悪い話なのだがコメディタッチで意外にも笑いながら読んでしまった。
ホラーか!というほど強烈な行動を起こしておきながら、最終的には別れるほどでもないかなぁ…という夫婦の停滞した感じがとてもリアルだ。
最終的に男は振り回されただけというのがちょっとおかし悲しい。
それにしてもこの人はいつもタイトルがべらぼうにうまい。きっとまた鬱な話なんだろうよと思いながらもつい読んでしまう。
そして好きじゃないけどきらいでもないんだな、これが。
乾いた達観した視線が感じられて、ちょっと癖になる。