りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

落語教育委員会 柳家喜多八・三遊亭歌武蔵・柳家喬太郎 三人会(中野)

5/10(金)、中野ZEROホールで行われた落語教育委員会 柳家喜多八・三遊亭歌武蔵・柳家喬太郎 三人会に行ってきた。
以前、渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで行われた落語教育委員会に行った時は2階席の上の方で本当に見づらくて「この会はもう行かなくてもいいかな…」とちょっと思ったりもしたのだが、今回はそんなに大きなホールではなかったのでよかった。やはり落語はこれぐらいのホールが限界なんじゃないだろうか。

・コント「屋根バカ籠城編」
・こはる「真田小僧
・歌武蔵「五貫裁き
〜仲入り〜
・喜多八「居残り左平次」
喬太郎「梅津忠兵衛」

・コント「屋根バカ籠城編」
いつものように「携帯切ってね」のコント。
黒いTシャツに黒いパンツの犯人役の喬太郎師匠。着物を着るといかにも落語家さんらしい風情の喬太郎師匠だけど普段着はお腹がパツパツだよ〜。わははは。
人質役で横たわる喜多八師匠。そして会場の後ろから入ってくる歌武蔵師匠。

「お前の要求はなんだ?」
「今日配られたチラシから喜多八のCDのチラシを抜け!そしてなんだあれは?!三三が女性限定落語会だと〜?!三三じゃなくて俺にやらせろ!」
このサービス精神がたまらない。

・こはるさんの「真田小僧」。
前に一之輔師匠が前座で来ていたこはるさんと駅で会ったら「師匠、おはようございます!」と大きな声であいさつされて、周りの人が「この人よっぽどえらい人なんだな」という目で見て行って恥ずかしかった、という話をされていた。
「うちの一門の弟弟子は会っても”ちーっす”ぐらいの挨拶だからびっくりした。さすが立川流は違う」と。
本人も「立川流」をネタにしているらしく「私は落語界の北朝鮮のようなところにおりますもので」なんておっしゃっていたけれど、話し方がきれいでたたずまいも良くて気持ちがいい。

まくらから噺に入ったところが少し唐突な感じがあってちょっと笑いがおきていて本人は「??」という感じだったけど、噺もとてもよかった。メリハリがあって嫌らしくなくて歯切れがいい。好きになった。

・歌武蔵師匠の「五貫裁き」。
大岡越前物。こういう噺を聞くと法だけがすべてではないよなぁと思ったりするのだが、まあそうもいかないのか、現実問題。
歌武蔵師匠の八五郎はなんといっても「大きい」ので、これが深夜早朝やってきて戸をどんどん叩いて「一文持ってきたよ〜!」と叫ばれたら、さぞや迷惑だろうなぁ…。
人情噺って大げさにやられるとちょっとぐったりしちゃうんだけど、歌武蔵師匠は人情すぎず軽くて楽しかった。

・喜多八師匠の「居残り左平次」。
あまり好きな噺ではなかったのだが、喜多八師匠の「居残り左平次」を見てようやくその魅力がわかった。 なんだろう、この左平次という男は。
患って医者に療養を勧められた左平次。友だちを誘って品川の遊郭へ。さんざんどんちゃん騒ぎをして友だちは返してしまい自分はここに「居残り」をするという。
若い衆が不安がって勘定を払うように言うがあれこれ適当なことを言ってごまかして風呂に入ったりごちそうを食べたり。
しかしいい加減おかしいと問い詰められると「金はないよ」と言い放ち、自ら布団部屋へ入っていく。

当時「居残り」となると、縄で縛られたりしてさらし者にされることもあったのだが、左平次は座敷に上がりこんでお客にヨイショしたり酒をもらったり…。気が利いて芸も達者なのであっという間に人気者になり「いのさん」なんて呼ばれる始末。
それが気に入らないのが店の若い衆。彼らの苦情を聞いた店の主は左平次を呼び出して「勘定はもういいから帰れ」というのだが…。

左平次のちょい悪ぶりが見ていて小気味よくて楽しい。
口がうまくて調子が良くてずるいけれどどこか憎めない。喜多八師匠の左平次はとてもかっこよくてその魅力が十分伝わってきた。

喬太郎師匠の「梅津忠兵衛」。
小泉八雲原作ということで、以前三鷹で聞いた「雉子政談」と同じように、喬太郎師匠が原作をもとに落語にされた噺なのだろうか。
梅津忠兵衛という怪力の武士がつとめを終えて森を抜けて家に帰ろうとしていると、赤ん坊を抱いた女が現れて、「忠兵衛を見込んで」赤ん坊を抱いていてもらいたい、と言う。
こんな夜中にこんな森で…もしやこれはもののけか?と訝りながらも赤ん坊を預かる忠兵衛。
抱いているうちに赤ん坊がどんどんどんどん重くなってきて…。

薄気味の悪い話なのだが、こういうのをやらせると喬太郎師匠はうまいなぁ…。
忠兵衛が頼まれるとNOと言えなかったり、さらなる力を手に入れたあとの怪力ぶりがギャグタッチなところが面白い。

お三方とも重量級な内容でとても満足感のある会だった。席もよかったし満足。