りつこの読書と落語メモ

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プニン

プニン

プニン

★★★★

亡命ロシア人プニン教授のアメリカでの生活を、ユーモア溢れる軽妙なタッチで、ときにアイロニカルな悲哀をおりまぜ描いた長編小説。
1953年から1955年にかけて『NewYorker』に掲載されたプニン教授を主人公にした小説をまとめ、書き下ろしの章を加えて1957年に刊行された。
読むたびに内容が変わるこの本を、読み終えることはできるのだろうか。
プニン的なるものの力を、わたしたちはつい見逃す。はっきりと指さすことはできず、注視すると消えてしまう。書けないはずのものを明瞭に描くナボコフは、だからたしかに魔術師なのだ。もしかしてこの小説の本文は、プニンというひとつの単語なのかも知れない。 円城塔

これがナボコフ?なんかイメージが違う!と思ったけど、考えてみれば「ロリータ」しか読んだことがなくて、それもなんか読む前に想像していたのとは違う作品だったわけで、ナボコフらしさなどというものをわかっているわけではないのだ。

ロシアから亡命してきてアメリカで暮らすプニン教授。
真面目でひたむきで優しくて気難しくて人付き合いが苦手なプニンは、頑なだけど愛嬌があって目が離せない愛すべき人物だ。
日常生活には困らないレベルの英語もどこかおかしくて、コミュニケーションがとりづらいのはプニンの英語力の問題なのかはたまたその人間性によるものなのか。

語り口はとてもユーモラスなのだが(そのユーモアがちょっと意地悪でもある)、時折国を逃れてきた悲しさや愛するひとをホロコーストで失った絶望をのぞかせる。
「悲しみこそはこの世で人びとが本当に所有している唯一のもの」という言葉に全てが集約されている気がした。