りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

芸の饗宴シリーズ「披き・落語〜醸と贅〜」昼の部

3/18(月)、東京芸術劇場プレイハウス(中ホール)で行われた芸の饗宴シリーズ「披き・落語〜醸と贅〜」昼の部に行ってきた。
能楽と落語を同時に楽しもう!という企画で、落語の方は上方落語協会落語協会落語芸術協会そろい踏みというぜいたくな企画。
今までほとんど落語協会噺家さんしか見たことがなかったので、それも楽しみだった。

平日の昼間で少しお高めの公演ということもあって、来ているのは裕福そうな方が多くてちょっとびびる、るるる…。
少し早く来すぎたのでお店に入って本でも読みながら待とうかなと思って館内をうろうろしていると、1Fにベルギービールのお店が。
行っちゃう?行っちゃう?昼ビール行っちゃう?と一人盛り上がったのだが、満席だったのであきらめた…しょぼしょぼ。それでなくともお昼を食べたらなんか妙に眠くなってしまっていたので、これはビールより珈琲だろう!と思い直し、近くのスタバで時間をつぶした。

初めての会場だったのだが、とてもきれいでおしゃれでびっくり!
しかも入り口でとても素敵なプログラムを渡されて、こんなものをいただいたのは初めてだったので驚いてしまった。

能楽
舞囃子高砂」 武田宗和(シテ方観世流

落語
・春風亭昇々「生まれる!」
・三遊亭遊雀「悋気の独楽」
笑福亭三喬「月に群雲」
柳家喬太郎「ハンバーグができるまで」
〜仲入り〜
桃月庵白酒「松曳き」
春風亭昇太花筏

能楽は学生のころに一度見たきり。
とにかく伝統芸能にからきし弱いのでまったくなんのことだかわからなかったのだが、でもあの独特のリズムと静と動が見事に合わさった演奏と舞には体の中からどどどどっとアドレナリンが出てくる感じ。
まわりでは寝ている人も多かったけれど、私は楽しかった。

昇々さんは昇太師匠のお弟子さんらしい。プログラムには載っていなかったし前座ってことなのかな。
あの能楽の後の登場ということで、さらにこの素敵会場に気合の入った企画でさぞかしやりにくかっただろう。しかもここで新作落語
陣痛が始まって今にも生まれそうなのだが、子どもを早生まれにしたくなくて、まだ出すまい!と頑張る奥さんと、見守る旦那さん、という内容。
汗をかきながら叫びながらの熱演でとても面白かった。新作やるならこれぐらい爆笑ものをやってほしいな。私は好きだったな。

遊雀師匠の「悋気の独楽」。
遊雀師匠は初めて見たんだけど、マイクをとても上手に使っていて、なんとなくテレビ慣れしているような印象。私「笑点」が好きじゃないので、なんとなく芸協は苦手かなぁ(と言いながら昇太師匠は好きなんだけど)と思っていたんだけど、決めつけちゃいけないなぁと思った。
定吉が独楽をまわして本妻に結果を言うくだりがもうおかしくておかしくて、大爆笑だった。

三喬師匠も初めてで、上方落語も「ちょっと苦手かな」と思っていたんだけど、とんでもなかった。もう面白い面白い!今回見た中で一番おもしろかった。終わってすぐにチケットサイトで探して早速独演会のチケットを買ってしまった。
「月に群雲」は新作落語らしい。
泥棒二人が盗品を買ってくれる道具屋に行く。そこで泥棒が「月に群雲(むらくも)」と言うと道具屋の主人(元泥棒)が「花に風」とこたえる。つまり「月に群雲」というのは泥棒同士の合言葉なのである。
泥棒の子分がやたらとことわざを言うのだがこれが微妙に間違っていたり、盗んできたものが十一面観音の4面を落として七面観音だったり、弁天様を海に落としてしまった六福神だったり…と、いちいち面白いのだが、私が一番おかしかったのが道具屋の主人。

「月に群雲」と言われると、「う、うん」「う、うん」と咳払いをさんざんしたあとで勿体ぶって煙草を吸ってから「花に風」とこたえるのだが、この「う、うん」という咳払いがもうたまらなくおかしい。
最初は何をやってるのかわからなくて「?」だったのだが、2回目3回目のお客が来てこれをやりだすと、もうこの間がなんともいえずおかしくておかしくてたまらない。
噺が終わってはけていった後もしばらく笑いが止まらなかった。

喬太郎師匠は「ハンバーグができるまで」。これは前から見たかったのでうれしかった!こういう男女ものの新作って見ていてちょっと恥ずかしいんだけど、くさいのぎりぎり前ぐらいで留めているところが良いなぁ。
おせっかいな商店街のおじさんおばさんが生き生きしていてまるでお芝居を見ているようだった。

白酒師匠の「松曳き」。これは白酒師匠の十八番らしいのだが、私は初めて見る噺。
殿様も三太夫も粗忽というのが面白い。「近う来い」と呼んでおきながら、近づいていくと「曲者じゃ!!」。植木屋を呼んで宴会をしておきがら、「無礼者!帰れ!」。
殿様が粗忽という噺は初めて聞いたので、最初ちょっと驚いてしまった。面白かった。

そしてトリが昇太師匠。
もう出てきただけで明るい軽い。いつでもご機嫌でいつでも笑わせてくれるという安心感。
まくらでは志の輔師匠と同期だという話や、ちいさんぽと一線を画す若大将のゆうゆう散歩の話。最近自分を見失いがちな私には、昇太師匠の「みんな違う人間なんですから違ってていいんですよ」という言葉がなんだか胸にしみた。じーん…。

噺の方は「花筏(はないかだ)」。
姿かたちがそっくりだからと大関花筏の替え玉として巡業に出た提灯屋。
病気をしていることは伝えてあるから相撲はとらなくていいといわれていたのだが、巡業先で調子に乗って飲めや歌えやで大はしゃぎをしていたら、そんなに元気なら相撲をやってくれと言われ、千鳥ケ浜大五郎という飛び切り強い素人力士とたたかうはめに。
あんなのに投げ飛ばされたら命がなくなっちゃうと半泣きの提灯屋に親方は「大五郎がちょっとでも体に触れたらひっくり返れ」とアドバイス。
一方大五郎の方は父親に「今まで対戦した相手はわざと負けてくれていたのを気づかなかったのか。花筏は今まで負けてくれていた力士たちの敵討ちにやってきたのだ。本気で戦ったら殺されるぞ」と言われる。
そんな二人の取り組みは…。

提灯屋のはしゃぎっぷりやびびりっぷりがとても楽しくてもうげらげら笑いっぱなし。楽しかった。

というわけで大満足の会だった。
特によかったのが三喬師匠!また好きな噺家さんが増えてしまった。