りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第七官界彷徨

第七官界彷徨 (河出文庫)

第七官界彷徨 (河出文庫)

★★★★★

七つめの感覚である第七官―人間の五官と第六感を超えた感覚に響くような詩を書きたいと願う、赤いちぢれ毛の少女・町子。分裂心理や蘚の恋愛を研究する一風変わった兄弟と従兄、そして町子が陥る恋の行方は?読む者にいまだ新鮮な感覚を呼び起こさせる、忘れられた作家・尾崎翠再発見の契機となった傑作。

80年も前に書かれたとは思えないみずみずしさに驚く。

精神分裂患者に振り回される長兄、蘚の恋愛を研究する次兄、音大目指して浪人中の従兄、そして第七官に響く詩を書くことを夢見る町子。彼らの日常が町子の視線で語られるのだが、どこがねじが外れているような不思議な感覚で、それがしんみりしているのに決して湿っぽくはなくユーモラスでなんともいえず面白い。
町子のことをいいように使っているようでいて案外温かい兄の視線がとても心地よい。