いろんな気持ちが本当の気持ち
- 作者: 長嶋有
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/10/06
- メディア: 文庫
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2011年デビュー10周年を迎えた著者の、創作の原点がわかる、第一エッセイ集。じたばたと考え、小説を書き、小説を読み、記憶をさぐり、そして日常を送る…。世界のなにに注目し、それをどう描いていくのか。新鮮な驚きと独特のこだわりに満ちた、長嶋有ワールドは、どんなに短いエッセイでも健在。文庫化にあたり、書き下ろしエッセイを追加。
どうも最近本が読めないのでエッセイばかり読んでいる。
エッセイなら読みやすいから今みたいに気持ちが散漫になっている時でも読めるだろうと思って読むのだが、これが案外そうでもなくて。
自分の感性にぴたっとはまらないとエッセイというのはただただ耳障りなだけなのだ。
そういう意味ではこれは今の気持ちにぴたっとマッチしたエッセイだった。
まずなんといってもタイトルが秀逸。確かにいろんな気持ちが書かれていて本当の気持ちなんだろうなと納得する。
この中で穂村弘を評した言葉が本当に的を得ていて素晴らしいと思った。
穂村弘は世界が自分にもたらす驚きと、世界に対して「自然体になれない」自分への驚きとをしつこく語る
(中略)
社会から落ちこぼれず、逸脱することのないまま屈託だけを抱えている。だからこそこのエッセイに共感する。
私も同じようなスピリットで生きていて、だから面白く思ったり「あるある!」って共感するのだな、と思った。
さらに彼らの魅力は(とここですでに穂村弘と長嶋有をひとくくりにしちゃうのだが)共感だけではなく、突出した面で読者を置いてけぼりにするところにある。
自信なさげで案外確信を持っていてでも基本的には弱気で決して押しつけがましくないところがいい。
小説も好きだけどエッセイも好きだ。