りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

アンデスのリトゥーマ

アンデスのリトゥーマ

アンデスのリトゥーマ

★★★★

苛烈な〈革命〉の嵐吹き荒れるペルー。『緑の家』のアマゾンとは一転、テロリストの影に怯えながらアンデス山中に駐在する伍長リトゥーマと、愛すべき助手トマスの目の前で、三人の男が消える。彼らの身に何が起こったのか? 迷信、悪霊、暴力、正義──交錯する語りのなかに、悪夢と現実が溶け合う。ノーベル賞作家・バルガス=リョサの世界を堪能できる一作。

テロリストに怯えながらアンデスに駐在する伍長リトゥーマと助手のトマス。彼らのもとに夫が突然消えてしまったと村の女が捜査を求めてやってくる。行方不明者はこれで3人目。彼らはテロリストに連れて行かれたのか、あるいは悪霊の仕業なのか。
無情な殺戮を繰り返すテロリストと、何を聞いても虚ろな目をしたまま答えない鉱夫たち。
価値観や基準がまるで違う世界に迷い混んでしまったリトゥーマの不安が読んでる側にもじんじん伝わってくる。

山中の集落には酒場を営むアンデス住民の夫婦がいて、夫のほうはリトゥーマに「生贄」をほのめかし、妻のほうは悪霊の存在をほのめかす。
最初は戯言にしか聞こえなかった彼らの言葉が、この土地ならそういうことがあっても不思議ではないという不安にかわる。
そんな不穏な空気の中、とりつかれたように語る助手トマスの恋物語が破滅的なのだがどこかユーモラスで和む。
邪悪にも救い主にも見える酒場の夫婦が強烈な印象を残す物語だった。