りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ブラックアウト

ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

★★★★

2060年、オックスフォード大学の史学生三人は、第二次大戦下のイギリスでの現地調査に送りだされた。メロピーは郊外の屋敷のメイドとして疎開児童を観察し、ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲で灯火管制(ブラックアウト)のもとにある市民生活を体験し、マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤退における民間人の英雄を探そうとしていた。ところが、現地に到着した三人はそれぞれ思いもよらぬ事態にまきこまれてしまう…続篇『オール・クリア』とともにヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞の三賞を受賞した、人気作家ウィリスの大作。

新作と聞いてウキウキワク、期待に胸を膨らませて読んだ「ブラックアウト」。読みはじめて相変わらずのドタバタに、ああこれね、またこれね、この感じねと少しガッカリした。
そうなのだ。コニーウィルスと言えばドタバタ巻き込まれ系SF。壮大なめくるめくストーリーだけど、テイストはドタバタなんだった。
何となく今の気分的には静かな作品をじっくり読みたいところだったので、このドタバタが少ししんどかった。
特にこういう巻き込まれ系の場合、巻き込まれてしまうに至る必然性があってしかるべきなのでは?学生たちが実習のためにっていうのはなんか動機として弱くない?なんて、柄にもなく細かいことが気になってしまったり。
ちょっと読み時を間違えたかな。

とはいうものの、過去に行ってからのストーリーはとても面白かった。
SFと言いながら丹念に描かれるのが第二次対戦下のイギリスというのがとても面白い。疎開児童の観察を行うため郊外の屋敷でメイドとなったメロピーは、チビッコギャングさながらの悪童ホドビン姉弟に振り回されながらも、彼らのことを思い行動する。
デパートの売り子としてロンドン大空襲を体験するポリーは、灯火管制(ブラックアウト)のもと防空壕の中で知り合った人たちと心をかよわせる。
民間の英雄を探すためアメリカ人記者として訪れたマイクルはダンケルク撤退に居合わせてしまい負傷する。

未来から来たことを隠し、過去の人々の中に入って生活する三人は、自分たちの起こした行動で歴史が変わってしまうことを恐れながらも、彼らの暮らしぶりに触れ心をかよわせる中で、単なる傍観者ではいられなくなる。
756ページという物凄いボリュームなのだが、饒舌な語り口にページをめくる手を止めることができず一気読み。しかしこれがまだ半分地点なのだ。
この広げまくった風呂敷をどう畳んでいくのか、いやおそらくまだまだ広げていくことが予想され、早く続きが読みたいような、いましばらくと休みしたいような心境だ。