不愉快な本の続編
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/09
- メディア: 単行本
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女と暮らす東京を逃げ出した乾。新潟で人を好きになり、富山のジャコメッティと邂逅し、そして故郷・呉から見上げる、永遠の太陽―。不愉快な本を握りしめ彷徨する「異邦人」を描き、文学の極点へ挑む最新小説。
「ラジ&ピース」「逃亡くそたわけ」「ばかもの」「末裔」「妻の超然」と読んできて、これが私にとって6作目の絲山秋子作品だが、6作読んでもまだ全貌を掴むことができない。毎回カラーが違うから毎回驚かされてしまう。
これまでのところわかりやすい文章でわかりにくいことを書く人、という印象かなぁ。
これはまたものすごく読みやすいのだが、読み終わってなんだったんだ?と???になる話であった。
軽薄なようで深い意味があるようで、簡単に見えるけどとても難しい。
主人公はフランスに留学した過去があり、ヒモになったり金貸しをしたりしながら、日本を移動し続ける。何かから逃げているようなのだが、逃げなければいけないという切実さは感じられず、「そろそろ次行くか」みたいな軽いノリ。
自分の最低さ加減は自覚しているけれど改める気もなく、かといってへっちゃらでいるわけでもない。
故郷を捨ててふらふらと移動する彼はまさに「たびの人」。どこにでもすぐになじみ友だちもできるし年上の人にもかわいがられるけど、いつも余所者なのだ。
最低の男なのに嫌いになれないのは何故なんだ。
まともに見えた昔のガールフレンドの姿を町で見かけるシーンが秀逸だ。なんだかぞくっとする。
そしてラスト「入る」で、え?と驚かされる。
なんだなんだなんだったんだ。おかしなタイトルだなぁと思っていたけど、タイトルに忠実だったってことなのか。
小説っていろんなことができるんだなぁ。合わない、不愉快っていう感想も目にしたけれど、私は結構好き。