りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

気分上々

気分上々

気分上々

★★★★

「自分革命」を起こすべく親友との縁を切った女子高生、家系に伝わる理不尽な“掟”に苦悩する有名女優、無銭飲食の罪を着せられた中二男子…、人生、単純じゃない。だからこんなに面白い。独特のユーモアと、心にしみる切なさ。森絵都の魅力をすべて凝縮した、多彩な9つの物語。

この人の描くワカモノが好きだなぁ。
子どもの不自由さを体感させながらそこから脱出しようとするエネルギーを感じさせてくれるので、思わず応援したくなる。がんばれがんばれ。
特に好きだったのは「17レボリューション」「ブレノワール」「気分上々」。

「17レボリューション」は自分を変えたい一心で親友と縁を切ると宣言する女子高生の話。
この思い込みの激しさと身勝手な理屈と無意味なストイックがいいなぁ。なんかこういう全く意味のないやせ我慢を修行みたいにやってみたくなるのだな、若い頃は。それを大人すぎない視線で描くところがとても好きだ。

「ブレノワール」は慣習にとらわれる田舎の暮らしに背を向けて都会でシェフになった主人公とそんな彼を認めることなく死んでいった母の物語。自分のことを真に理解してくれる女性と出会い、過去の自分や捨ててきた故郷を振り返ることができるようになったとき、反発してきた母の今まで見えてこなかった姿にようやく気付くことができる。

「気分上々」は「男は余計なことは言うな」という父の遺言に縛られて身動きがとれなくなった中学生男子の物語。
大好きだった父が亡くなってバランスを欠いてしまった家族関係に苛立ちもがく主人公の姿が切ないが、そんな悩みも一瞬にして忘れさせる「エロ」への渇望。ぶわははは。おかしい!
「気分は上々」ってなんて素敵なフレーズなんだろう。陰鬱な方向に傾きがちな今日この頃だけど、私も出来るだけこう言えるようにがんばろ。