相田家のグッドバイ
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/02/24
- メディア: 単行本
- クリック: 62回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
普通の家庭だったけれど、ちょっと変わった両親。最後に息子がしたことは破壊だったか、それとも供養だったのか?さよならだけが現実だ。血は争われない。森博嗣の家族小説。
なんとなく読まず嫌いで避けていた森博嗣。
理系っていうので自分の好みじゃないんだろうなというイメージと、多作であることからなんとなく職業作家的なイメージがあって、わざわざ読まなくても…と勝手に思っていたのだ。
でもこの本の感想をお気に入りの読書ブログで読み、俄然興味が沸いて、読んでみたのである。
とてもおもしろかった。
語り手は相田家の長男紀彦。父と母が他界し、その父と母の生前の様子を時系列に淡々と語っていく。
この静かな語り口、いかにも理系らしい?エモーショナルでない文章が読んでいてとても心地良く、最初から最後までにやにやしながら夢中になって読んだ。
ある家族の物語をひたすら淡々と語っているだけなのだか、なんでこんなに面白いのか。
特に劇的な事件が起きるわけでもなければ、琴線に触れるようなハートウォーミングな出来事があるわけでもないのだが、それでも語り手が両親に愛情を注がれてきたことは伺えるし、語り手がそんな両親を愛していたことも伺える。
家族のかかわり方や温度感というのはそれこそさまざまなわけだが、それが自分の根っこになっているということは間違いないわけで、そのことがひしひしと伝わってきて、なんだかいいなぁ…と思った。
相田家がことさら変わっているわけではなくて、どの家庭もこんな風に客観的な視線で詳細に描いたら、少しおかしくていびつに見えるのだろうなと思う。
親子であっても完全にわかりあうことはできないし、時にはすれ違い傷つけることもある。
でも好き嫌いで片付けられない絆というものがあって、だからこそ、この結末なのだろう。
物を異常な位溜め込まれた相田家が更地になるのがとても印象的だった。