りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

時は老いをいそぐ

時は老いをいそぐ

時は老いをいそぐ

★★★★

東欧の元諜報部員、ハンガリー動乱で相対した二人の将軍、被爆した国連軍の兵士など、ベルリンの壁崩壊後、黄昏ゆくヨーロッパで自らの記憶と共に生きる人々を静謐な筆致で描いた最新短篇集。

うーん、渋い。「双頭のバビロン」を読んだ直後に読んだので、逆にこの静けさにどきどきしてしまう。
登場人物はみな老境にあるがそれぞれの事情については多くは語られない。
それまでの人生で手にしてきたもの、それとは引きかえに失ってきたものが、断片的に浮かび上がる。人生はあまりに短く儚いが生が輝きを放っていた瞬間がきっとあったのだ。

危篤の叔母を見舞う作家を描いた「ポタ、ポト、ポッタン、ポットン」、「将軍たちの再会」「雲」がとりわけ好きだった。