りつこの読書と落語メモ

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尼僧とキューピッドの弓

尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)

尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)

★★★★★

官能の矢に射られたわたしは修道女。9人の尼僧が噂するのは弓道が引き起こした駆け落ち。積み重なる言葉、立ちのぼる女性の生と性――時と国境を超えふたつの物語が交差する書き下ろし長篇小説。

「雲をつかむ話」がとっても好みだったので、これから次々と作品を読んでいこう!と思っている多和田葉子。これもとても良かった。

ドイツのプロテスタントの修道院を訪れた「わたし」(作家)は、そこに暮らす中年の個性溢れる尼僧たちと1ヶ月ともに生活する。
わたしを招いてくれた尼僧院長は不在でどうやらその話題は「タブー」のようなのだが、噂過ぎの尼僧が「院長は弓道の師匠と駆け落ちした」と教えてくれる。
世俗を離れ神に仕えているというイメージとは程遠い、バイタリティに溢れていてお茶目でちょっと意地悪で強かな尼僧たちにまず驚く。
でも決して嫌な感じはなくて、第二の人生をこんなふうに送るのも悪くないかも、と思わせてくれる。

いきなりささっと幕を閉じるように第一部が終わってあっけにとられていると、第二部は一部で大いなる謎であった尼僧院長が語り手。
今度は尼僧院長によって赤裸々に内面が語られ、うおーそういうことだったのか、と驚くのだが、最後まで読んでみるとまたわかったようなわからなかったような…。

「わたし」と尼僧との距離感が絶妙で、え?そんなにいきなり核心に?と思わせたかと思うとさっと後ずさる。
物語自体も、すごくリアルな物語なのかと思いきや、ふわっと現実味を失いファンタジーな展開になる。
作風がとっても好みだ。空気感、リズムが自分の呼吸に合ってる感じがする。