りつこの読書と落語メモ

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クートラスの思い出

クートラスの思い出

クートラスの思い出

★★★★

存命中も熱心なファンはいたものの、華やかな評価のなかったロベール・クートラスの作品が、没後四半世紀たち、彼の暮らしたパリから遠く離れた日本で、熱狂的な盛り上がりを起こしています。今まで詳しく知られることのなかった、彼の生涯を、彼が最晩年、同居し、遺言にしたがい、作品を管理をする女性がはじめて綴りました。パリの町並みのなかに、アルザスに、ブルターニュのカテドラルに、クートラスが、今、蘇ります。

自分の作品を商売の道具として考えることができず、生活を犠牲にして大切な絵を描こうとした画家ロベール・クートラス。
彼の晩年をともに生活し遺言にしたがって作品を管理しているのが、この物語の作者である岸真理子さん。
クートラスの未発表デッサンを含む、図版を交えながら、彼女が語るクートラスの生涯。

才能に恵まれることと生きやすさとは反比例するのかもしれないとしみじみ思った。
優しくてユーモアがあって女性にもてて友人に恵まれながらも、圧倒的な孤独感がクートラスにはあって、だからこそ作品がこんなにも素晴らしいのだろうし、だからこそ長生きはできなかったんだろうなぁ、と思う。
身を削るようにして作品を生み出す姿は痛々しくもあるけれど、神様に選ばれた人間の輝きも放っている。

収められたカルト、絵、デッサンがほんとうに素晴らしくて、もっと作品を見てみたいと思った。展覧会があったら是非行ってみたいなぁ…。

それにしてもクートラスが作者である真理子に投げた一言のなんと残酷なことよ…。
傷つきやすい人が人を傷つけないわけではないのだよなぁ。
それでもクートラスのことを理解し愛し作品を守りこうして彼の物語を紡ぐ、作者の使命感や覚悟が素晴らしいと思った。