りつこの読書と落語メモ

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よくできた女(ひと)

よくできた女(ひと) (文学シリーズ lettres)

よくできた女(ひと) (文学シリーズ lettres)

★★★★★

舞台は、また食料配給がつづく戦後のロンドン・ヒロイン兼語り手のミルドレッドは30過ぎの独身女性。両親の残してくれたささやかな収入に頼りつつ、パートタイムで働く彼女は、親しい牧師姉弟や旧友と交流したり、教区活動に加わったりしながら平穏な生活を送っている。そんな彼女の住むフラット上階に、文化人類学者のヘレナと海軍将校の夫が引っ越してきた。美人で魅力的だが家事はさっぱりのヘレナと、ハンサムで女たらしのロッキーという「華のある」夫妻の登場で、ミルドレッドの静かな生活に波風が立ちはじめる。著者の代表作にして「おひとりさま」小説の傑作、待望の翻訳。

これは面白かった!
主人公のミルドレッドが好きすぎる!

分別がありすぎて傍観者になってしまい恋愛ができない「よくできた女」。
低く見られてムッとしたり、地味な自分にうんざりしたり、ちょっと妄想してはそんな自分に笑ってしまったりする姿には、共感せずにはいられないのだが、宗教心や慎ましさや抑制には堅苦しさと時代を感じる。
でもそれがまた魅力になっていて、読んでいて楽しい楽しい。

いつもここに来ればお茶を淹れてもらえるとは思われたくないわと思いながら、ついお茶を淹れてしまい「あら今日は薄すぎたわ」「今日は濃すぎてしまった」と気に病みながら、結局いつもお茶を淹れてもらえる場所に成り下がってしまっていることに気付いて「あーあ」と思いながら、でもやはり丁寧にお茶を淹れてしまう。

女性の扱いがうまいハンサムな腰軽男ロッキーに優しくされて少しロマンティックな気持ちになりながらも、友だちに言われて一緒にトイレに入ったミルフレッド。

実際のところ、トイレのようなげんなりする場所で、汚くうす暗い鏡に映った自分の顔を見ると、ロマンチックな考えも吹き飛んでしまいました。

なんとなくむしゃくした気持ちでデパートに入り普段だったら買わないような口紅(その名も「ハワイの火」)を衝動買いしてしまったミルフレッド。

多くの女性が一日ぞんぶんにショッピングを楽しみ、家に帰って眺める品物も手に入れたのでしょう。私が買ったものといえば<ハワイの火>と、夕食用のつまらない食べ物だけでした。

他人の痴話ケンカに巻き込まれたり、恋愛感情を抱いたことがない相手に失恋したことになっていたり、ちょっと気の毒なミルフレッドなのだが、しかしそれらの出来事を思い出してあとからくすっと笑うような面白がり屋で、基本的にいつも上機嫌なので、読んでいてこちらもくすくす笑ってしまう。
堅苦しいほど敬虔で生真面目なんだけど、時々妄想に走っては我にかえり笑ってしまっているので、それにも笑ってしまう。

いかにも退屈しそうな題材なのに全く退屈せず、クスクス笑いながら、ミルドレッドを愛しく思いながら読んだ。とても楽しかった!
で、あと翻訳されている作品が「秋の四重奏」で、あれ?聞いたことがあるぞと思ったら、すでに読んでいた。
「秋の四重奏」
他の作品も翻訳してほしいなぁ!