りつこの読書と落語メモ

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怪物はささやく

怪物はささやく

怪物はささやく

★★★★★

ある夜、怪物が少年とその母親の住む家に現われた―それはイチイの木の姿をしていた。「わたしが三つの物語を語り終えたら、今度はおまえが四つめの物語をわたしに話すのだ。おまえはかならず話す…そのためにこのわたしを呼んだのだから」嘘と真実を同時に信じた少年は、なぜ怪物に物語を話さなければならなかったのか…。

物語、装丁、挿絵と全てが素晴らしくて、この独特な世界に一気に引き込まれた。

13歳の少年コナーは母親と2人暮らし。母は癌に冒され痛みと闘いながらも明るく振舞い、コナーもできるだけ母の負担を減らすよう家事に協力している。
母の病気が知られてから学校では腫れ物に触るような扱いをされ、ハリーという少年からは苛められるようになり、幼馴染のリリーとは絶交状態。
父親はそんな母を捨てて出て行きアメリカで再婚しており、2人を心配して手伝いに来てくれる祖母は強烈な人柄で馴染めない。
コナーの毎日はとてつもなく過酷で孤独で、毎晩悪夢に悲鳴をあげる。

そんなコナーのもとにある日の夜0時7分に怪物が現れる。
そして、自分は3つの物語をコナーに聞かせるから、その後にお前の4つめの物語を自分に話せ、という。
怪物は御伽噺のような物語を語り始め、反感を覚えながらも物語を聞いていたコナーは物語と現実の間をさまよい始める。
怪物はなぜ来たのか。コナーに何をさせようというのか。

怪物が語る意味深な物語と13歳の少年が引き受けるにはあまりにも過酷な現実。
コナーの抱える圧倒的な寂しさと恐怖が胸にせまってくる。
読みながら自分も一緒におばあちゃんの居間をめちゃくちゃにしハリーをぼこぼこにぶちのめし父親に悪態をついた。
そしてコナーの4つめの物語には涙涙涙。

もう助からない、無理だと絶望しながらも、その一方で奇跡が起きるかもしれない、今度こそうまくいくかもしれないという小さな希望を抱く。
闘ってほしいあきらめないでほしいと願う一方で、いつまでこれが続くのかもう終わりにしてほしいとおもう。
その矛盾こそが人間の心なのだ。
しかし物語はその曖昧さや矛盾を許さない。
そして怪物はコナーに言う。「真実を語れ」と。

こんなにもリアルに死にゆく者と見送る者の気持ちを描きながら、児童文学として成立していることに驚く。
そしてこんなにも過酷で残酷なのに、最後に残るのが優しさであることにも驚く。
ブラボー。