りつこの読書と落語メモ

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だれかの木琴

だれかの木琴

だれかの木琴

★★★★

「またお店でお会いできるのを楽しみにしています」平凡な主婦・小夜子が、ふと立ち寄った美容室で担当してもらったスタイリスト・海斗から受け取った一本の営業メール。ビジネスライクなメールのやりとりは、やがて小夜子に自分でも理解できない感情を生んだ。どうしたら、彼のメールを取り返せるのだろう。だんだんと海斗への執着をエスカレートさせる小夜子。だが、自分が欲しいのは本当に海斗なのだろうか……。明らかに常軌を逸していく妻を、夫である光太郎は正視できない。小夜子のグロテスクな行動は、やがて、娘や海斗の恋人も巻き込んでゆくが——。

平凡で幸せなはずの主婦・小夜子がある日美容師から受け取った営業メールに返信をしたところから、徐々に常軌を逸したストーカー行為を行うようになっていく。
娘は母の異変に気付き父・光太郎に助けを求めるが、光太郎はそんな妻を認めることができない…。

この静かに壊れていく感じが恐ろしくリアルだ。
共感はできないのに、分からないではない。いや、正直にいえばよくわかる。深いところで理解できる。

まるで恋に狂ったような行為であってもそこに恋愛感情はなく執着もない。ただそこにちょうど良い人がいたというだけなのだ。
ほんとは彼女が誰に大切にしてもらいたいのか、何に怒っているのか、ほんとに悪いのは誰なのか、どうしたいのか、幸せなのか不幸なのか、正常なのか狂っているのか。
そこに正解がないのが辛い。

そして読んでいる私自身もいつそうならないとは限らないのだ。
そういう根が自分にもあることを確かに私は自覚している。
グロテスクだけど不愉快ではない。
好きなタイプの小説ではないけど嫌いじゃない。