最初の刑事
最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件
- 作者: ケイト・サマースケイル,Kate Summerscale,日暮雅通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/05/20
- メディア: 単行本
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1860年、ヴィクトリア朝時代の英国。6月のある朝、のどかな村にたたずむ屋敷“ロード・ヒル・ハウス”の敷地で、当主の3歳の息子が惨殺死体となって発見された。殺された子どもは施錠された屋敷内にいたはずだった。犯人は家族か、使用人か?世間が注目するなか、捜査の任についたのはジョナサン・ウィッチャー警部。1842年にスコットランド・ヤード刑事課が創設された際に最初に刑事になった8人のうちのひとりで、ずばぬけた技量を持つ敏腕刑事である。優れた推理力をはたらかせ、事件の謎に迫るウィッチャー。しかし、非協力的な遺族や、プライバシー神聖視の風潮、加熱する報道、さらには刑事への偏見もあいまって、事件は数奇な道すじをたどる―ヴィクトリア朝英国を揺るがし、後に数々の探偵小説が生まれるもととなった幼児殺害事件の驚くべき真相とは。当時の特異な世相をも迫真の筆致で描き出す圧巻のノンフィクション。サミュエル・ジョンソン賞ほか受賞作。
1860年、ヴィクトリア朝時代の英国で実際に起こった殺人事件。
屋敷の中で当主の3歳の息子が惨殺されたのである。
この事件の捜査に当たったが創設されたばかりの刑事課の「最初の刑事」ウィッチャー警部。
捜査は難航し、マスコミはあることないこと書きたて、一般の人たちはにわか探偵となり犯人捜しに躍起になり、屋敷の中の人々のプライバシーは侵害される。
これが全くのノンフィクションであるということに驚く。
まさかディケンズが出てくるとは!そしてディケンズが刑事に憧れを抱いていたとは!
時代が違えば全く違うこと。例えば初期調査を行った地元警察が、証拠品だったかもしれない代物を「下着だから」という理由で見て見ぬふりをしたりとか、科学捜査の手法がなかったため誰の血液であるかを判明できなかったりとか。
そして時代が違っても変わらないこと。憶測で扇情的な記事を書くマスコミや勝手な憶測で関係者を断罪する世論とか。
その対比が面白かった。
そして犯人が自首したあとでさえ、最後まで真には分からない殺人の動機。
現実の世界では本当のところがわからないからこそ、フィクションの世界でそれを明らかにしていこうとしているのかもしれないなぁ。なんてことを思った。