りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

漁港の肉子ちゃん

漁港の肉子ちゃん

漁港の肉子ちゃん

★★★★★

みんな、それぞれで生きている。それでいい。圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編。

前から気になっていた西加奈子さん。
多分すごく好きなんじゃないかと期待して読んだのだが、想像以上に好みだった!とても良かった。何度も笑って何度も泣いた。

どうしようもない男に騙されては借金を抱え込み必死で返したと思ったらまたしょうもない男に騙されて街から街へと旅に出る。
そんな肉子ちゃんと娘の喜久子ちゃんがたどり着いたのは北の漁港。
肉子ちゃんの肉肉しさが買われて焼肉屋さんで働きだした肉子ちゃん。
物語は10歳の喜久子の目線で語られる。

底抜けに明るくてお人好しで空気を読まなくて優しくてダサくて逞しい肉子ちゃん。
こんなに魅力的な主人公に久しぶりに出会った。
肉子ちゃんは言われた言葉は鵜呑みにし空気も行間も読まないけれど、圧倒的な善意と好意のかたまりで、それはもうものすごい強さで周りを照らし出す。
一方喜久子は空気ばかり読んで気を使う子どもげのない子ども。

時に肉子ちゃんのことを恥ずかしく思うこともある喜久子だけど、成長する過程で味わう疎外感や自己嫌悪をも全て包み込む肉子ちゃんの肯定力!
そしてちゃんとそれを受け止める喜久子。

子供げがない喜久子ちゃんも漁港のおじさんたちもやったりやられたりの小学生女子も皆愛しい。
私も心がささくれてきたら、漢字をばらして「って読むのやから!」と心のなかで叫んでみよう。ブラボー。