りつこの読書と落語メモ

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ロスト・シティ・レディオ

ロスト・シティ・レディオ (新潮クレスト・ブックス)

ロスト・シティ・レディオ (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

舞台は内戦状態にある架空の国の首都。行方不明者を探すラジオ番組「ロスト・シティ・レディオ」の女性パーソナリティーのもとを、ある日ひとりの少年が訪ねてくる。ジャングルの村の人々が少年に託した行方不明者リストには、彼女の夫の名前もあった。次第に明らかになる夫の過去、そして暴力に支配された国の姿―。巧みなサスペンスと鮮烈な語り。英語圏、スペイン語圏の双方で高い評価を獲得してきたペルー系アメリカ人作家による初長篇。PEN/USA賞、ドイツ・国際文学賞、受賞作。

素晴らしかった。
内戦が続き密告と報復が横行する中で行方不明になった夫を待ち続けながら、行方不明者の名前を呼ぶラジオの人気番組「ロスト・シティ・レディオ」のパーソナリティーをつとめる主人公ノーマ。
名前リストを託されて「1797」と呼ばれるジャングルからやって来た少年ビクトル。
ビクトルの持ってきた名前リストの中に、失踪中の夫の名前を見つけたノーマは、ビクトルを置いて行った男を捜し始める…。

母が死に一人ぼっちになって村を出てきた少年ビクトルの孤独と寄る辺なさ。
行方不明になった夫をおおっぴらに探すこともできないままに、一人ぼっちでひたすら帰りを待つノーマの圧倒的な寂しさ。
そして徐々に明らかになって行く消えた夫レイのもう一つの顔。

ノーマは失われた人たちの名前をラジオで呼ぶ。
彼女にできることはそれだけで、伝えるニュースにもほとんど真実は含まれていなくて、彼女の心も空っぽなのだが、彼女の甘く優しい声は大切な人を失った人たちの心に響きわたり救いと希望を与える。
彼女ならどうにかしてくれるんじゃないか、と思わせてくれる。

緊張感と不穏な空気の漂う物語だが、彼女の甘い声と出逢う人たちとの心のふれあいが、救いになっている。
暴力に満ちているが、耳をすまさないと聞こえないようなあまやかな調べが底流に流れているようなところがあって、そこがすごく好きだった。
そしてこのタイトルと表紙が素敵すぎる。ブラボー。