りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

モレルの発明

モレルの発明 (フィクションの楽しみ)

モレルの発明 (フィクションの楽しみ)

★★★★

二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。

国を追われて無人島にたどり着いた「私」は、ある日無人のはずのこの島で奇妙な一団に会う。
「私」はフォスティーヌという美しい女性に惹かれ、彼女を毎日覗き見る。フォスティーヌにはその一団のリーダーと思しき男モレルが執拗に言い寄っていて、「私」は気が気ではない。
ある日「私」はモレルが発明した驚くべき「機械」の演説を仲間たちにするところに居合わせる。
驚くべきこの機械とは…。

これはまた独特の雰囲気を持った小説だ。
南米だけどエモーショナルではなくて淡々と描かれていて、私は正直得意ではない文体だったので、読むのに少し苦労した。

主人公の置かれているような極限状態にあったら、自分が生きているのか死んでいるのかもわからなくなるのだろうと思う。
生と死、自分と他者の境界も曖昧になり、幻と現実が入れ替わり、いまの自分の生を殺して永遠の生を得ることが必然であるかのように思えてくるのは、恐ろしい。
恋愛それ自体幻想のようなものなのに、さらに「私」の恋した相手は生身でもないというのに、幻のためにあれほど固執した生命を投げ出してしまうとは…。

最後まで読むと、この小説はこうして読者を得て初めて物語となりえているということがわかる。
なんとも恐ろしい小説。