りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

しらない町

しらない町

しらない町

★★★★

故郷の島根を離れ、映画監督を夢見る青年、門川誠一。今は大阪でアパート管理のバイトで生活をしていた。ある日、亡くなった独り暮らしの老人、帯屋史朗の遺品を整理していた時、誠一は部屋で8ミリフィルムを見つける。映っていたのは―行商のため重いリヤカーで集落へと向かいながら、優しくほほ笑む女性の姿だった。帯屋老人はなぜこのフィルムを大切に保管していたのだろう。誠一はドキュメントを撮ることを決め、映像が撮られた場所とゆかりの人たちを訪ねてゆく…。独居老人の遺品の8ミリフィルムに導かれた青年がめぐりあう、戦争という時代、ありし日の故郷、人と人との絆の物語。

孤独死した老人帯屋の遺品を整理していて、彼の残した8ミリフィルムを見つけたアルバイトの門川。映画監督を夢見る門川は8ミリフィルムに心を奪われ、帯屋の過去を探すたびに出る。

誰にも看取られずに死んでしまえばその死は「孤独死」と名づけられてしまうのだが、だからといってその人が孤独であったとは言えないのだ。
死んだ時に一人だからといって、それまでの人生で常に一人だったわけではない。
大事に思っていた人、大事に思ってくれていた人、死んでもなお心からはなれない人、近くにはいないけれど心を離れない友もいるのだ。

孤独死した老人の人生をたどるうちに、人と関わらずに拗ねて生きてきた主人公が、人と関わることで道が開けたり人生そのものが開けていく。
老人たちの絆と、主人公がこれから築いていくであろう絆の対比も見事でとても良かった。