りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

もういちど生まれる

もういちど生まれる

もういちど生まれる

★★★★★

彼氏がいるのに、親友に想いを寄せられている。汐梨、平凡な日常と、特徴のない自分に飽き飽きしている。翔多、絵を通して、壊れた家族に向き合おうとする美大生。新、美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生。梢、才能の限界を感じつつも、バイトをしながらダンス専門学校に通う。遙。あせりと不安を力に変えた5人が踏み出す“最初の一歩”。

この人の作品はみずみずしくてまっすぐで言葉がキラキラしているから大好きだ。
短編もいいじゃない!
「チア男子!!」「星やどりの声」と読んできたけれど、これが一番「桐島、部活」に近い感じかな。
大学生のオトナのようで子どものようで何かができそうで何もできなさそうで達観しているようでそうじゃない感じが生き生きと描かれていてとても良かった。

・「ひーちゃんは線香花火」
汐梨が大学に入って仲良くなったのが、毅然とした美人ひーちゃんとたんぽぽの綿毛のような風人。
三人でいる時間が楽しくて落ち着いて大好きだったのだが、ある日汐梨がうとうとしている時にどちらかからキスをされて…。

見ているつもりで見えていなかったもの。
大切にしているつもりでないがしろにしてしまっていたもの。
若さゆえの傲慢さも今となっては愛おしい…(とほほ)。

・「僕は魔法が使えない」
これが「破りたかったもののすべて」とつながっているのだが、才能と努力っていうのはほんとにこの年頃の子たちにしたらメインテーマなのだろうなぁと思う。
才能がないとどんなに努力をしてもあるレベルを越えられないし、才能があっても努力しないとだめだし、でも努力を続けていけることも一つの才能だし…。

なんでもないオトナになってしまった私から彼らにかける言葉なんかないのだが、道は一つじゃない、ということは言いたいかなぁ。

・「もういちど生まれる」
同じ双子なのに、自分よりちょっとかわいくて頭が良くて読者モデルなんかやって一流大学に推薦で入って彼氏が途切れることのない椿と、二浪して予備校に通っている自分。
比べる自分もひがむ自分も嫌でしょうがないけれど、この不平等感はなんなんだ。
わかるわかると思いながらガンバレガンバレと読んだ。

全篇を通してちらりと顔を出す学生映画を作る虹色メガネの礼生くんがいい味だしてるなぁ!
そしてこのタイトルとぴったりの表紙がとてもいいね!