りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

メモリー・ウォール

メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)

メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

老女の部屋の壁に並ぶ、無数のカートリッジ。その一つ一つに彼女の大切な記憶が封じ込められていた―。記憶を自由に保存・再生できる装置を手に入れた認知症の老女を描いた表題作のほか、ダムに沈む中国の村の人々、赴任先の朝鮮半島で傷ついた鶴に出会う米兵、ナチス政権下の孤児院からアメリカに逃れた少女など、異なる場所や時代に生きる人々と、彼らを世界に繋ぎとめる「記憶」をめぐる6つの物語。英米で絶賛される若手作家による、静謐で雄大な最新短篇集。O・ヘンリー賞受賞作「一一三号村」およびプッシュカート賞受賞作「ネムナス川」を収録。

記憶をめぐる短編が6作収められている。
想像以上の素晴らしさ。
静かで淡々とした文章にぎゅっと心をつかまれて、激しく揺さぶられた。

人は孤独と絶望の中でもこんなにも優しくなれるし、なにもしてあげられることはなくても心を寄り添わせることはできる。
大切な記憶、日常、友達、家族…。どんな暴力も悲劇も私たちからすべてを奪うことはできない。
たとえ自分の記憶がなくなってしまったとしても、覚えていてくれる人はいるし、何もかもが消えてしまうわけではない。
読みながらそんなことを思った。何度かうっときて涙がこぼれた。

短編でここまで描けるとは…ただただ驚いた。すばらしい。