りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

まともな家の子供はいない

まともな家の子供はいない

まともな家の子供はいない

★★★★

「一週間以上ある長い盆休みはどう過ごせばいいのだろう…気分屋で無気力な父親、そして、おそらくほとんど何も考えずに、その父親のご機嫌取りに興じる母親と、周りに合わせることだけはうまい妹、その三者と一日じゅう一緒にいなければならない。…」14歳の目から見た不穏な日常、そこから浮かび上がる、大人たちと子供たちそれぞれの事情と心情が、おかしくも切ない。

なるほど。津村さんが中学生を描くとこんなふうになるのか。
いつもにもまして怒っている主人公。

子どもは不自由だよなぁ。家が嫌だとほんとにいる場所がないもの。
自分にも覚えがある。もうこんな家になんていたくない!と思って家を飛び出しても行く当てなんかなくて、図書館も案外休みが多いし遅くまでいられないし、そもそもお腹がすいたら家に帰って作ってもらったご飯を食べるしかなくて、いる場所を見つけるのってほんとに大変なんだ。
家にいたくないときは塾や学校は救いだけど、だからといって気が抜けるほっとできる場所っていうわけでもなくて、そこだって親にお金を出してもらって行かせてもらっている場所なのだ。

親もたいしたものではなくて、むしろ弱くて情けなくて汚くて…と気づくのがこの頃なのか。
でも弱くて情けなくて汚くてもそのわりには頑張ってるしちゃんとしようと思っているし、そもそもまともな家なんていうのはないんだな、ということに気付くのは、もう少し大人になってから、だよな。

読んでいると一緒にイライラした気持ちになってくるんだけど、でも言われっぱなしの親にも少し同情したりして…。
思春期ってほんとに容赦ないなぁ。

特に2作目の「サバイブ」がきつかったなぁ。
子どもも辛いし、親も辛いね、これは…。もちろんこれは圧倒的に親がいけないんだけど、それをムスメに見られて糾弾されるって…想像しただけで、ぞぞぞ…。
これはいけない。いけないよ。

なんとなく最後まで読んで、津村さんはまだ怒っているかもしれないなぁ、なんて思った。
怒り狂う中学生を自分の中にまだ抱えているんじゃないか、って。