りつこの読書と落語メモ

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ヴァレンタインズ

ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)

ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)

★★★★★

「一月」から「十二月」まで、夫婦や恋人たちの愛と絆にひびが入る瞬間を鋭くとらえた12篇。研ぎ澄まされた感覚、洗練されたユーモアが端正な文章の行間に漂う。アイスランド出身の実力派による、珠玉の第一短篇集。“アイスランド文学賞”“O・ヘンリー賞”受賞作。

これはまた渋い…渋い短編集だ。
1月から12月までの12章にわたって、恋人たちの情景が描かれている。

ふと感じた違和感、上手に言葉にできなかった気持ち、ついてしまったあるいはつかれてしまった嘘、いきなり切り出された別れ、些細だけれど決定的な出来事。
どれも思い当たるようなありきたりの情景なのだが、それがそれぞれの孤独を浮かび上がらせていて、ふと気付いたら見知らぬ土地でたった一人立っていたような、ぞわ〜とした感情を呼び起こされる。

特に好きだったのが、子どもができない夫婦がスキー旅行に行きケガをしてスキーができない夫が鬱々とする中で知り合いになった人に息子がいると嘘を言ってしまう「三月」、円満な家庭生活を送っていると思っていたら妻にいきなり別れを切り出される「五月」、父親と婿のちょっとした諍いが夫婦関係を決定的にしてしまう「六月」。

される方の気持ちも、してしまう方の気持ちもよくわかる。
長年連れ添った夫婦でも、少しずつすれ違っていってしまうことや、相手の気持ちが離れていっていることに気付かなかったり、一度の過ちでとりかえしがつかなくなることって、あるんだよね…。怖いわ…。

国民性なのか、この作者独自なのかわからないけど、寡黙な中にきらりと光る感性とユーモアがあって、とても良かった。好きだった。