ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
- 作者: ジョナサン・サフラン・フォア,近藤 隆文
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/07/26
- メディア: ハードカバー
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どこからどこまでも好みだった。前作も好きだったけど、これはもっと好き。
歴史的な悲劇から、
希望に溢れる神話が生まれた─全米ベストセラー、人気若手作家による9・ 11文学の金字塔、ついに邦訳。9歳の少年オスカーは、ある鍵にぴったり合う錠前を見つけるために、ママには内緒でニューヨークじゅうを探しまわっている。その謎の鍵は、あの日に死んだパパのものだった……。全米が笑い、感動して、心の奥深くから癒された、時代の悲劇と再生の物語。ヴィジュアル・ライティングの手法で編まれる新しい読書体験も話題に。
大好きな父親を9.11で失ったオスカー。
頭が良くてタンバリン奏者で親仏家でジュエリーも作れてコインも集めていてビートルズマニアでホーキング博士の弟子になりたい9歳だ。
父の死にとりつかれたオスカーは、あの日の情報を集めることをやめられない。自分がより深く傷つくとわかっていても、父の死を「発明」することをやめられない。
父はどういう風に死んでいったのか考えずにいられない。
そんなオスカーがある日父のクローゼットから青い花瓶に入った鍵と「ブラック」と記された封筒を見つける。
鍵に合う鍵穴を見つけるため、父の最期の瞬間を見届けるため、オスカーはニューヨーク中のブラックさんを探し始める。
大切な人を理不尽な暴力によって突然奪われる。
そのことにどうしても納得ができず、誰ともその気持ちを分かち合えず、どんどん日常と折り合いがつけられなくなる。
新しくBFを作って笑っている母のことも許せないし、訳知り顔の精神科医のことも信用できない。
自分のことを溺愛して心配する祖母のことは大好きだけど「年をとりすぎているから」助けを求めることもできない。
オスカー少年の孤独に胸が苦しくなるのだが、実は祖母と祖母を家に残して出ていった祖父はドレスデン爆撃で大切な人を失った経験があって、その喪失感を抱えて生きてきた人だったのだ。
だからこそオスカーを見守る目は痛いほどやさしく温かい。
そしてオスカーが訪ねて出会う「ブラック」さんたちにも、それぞれの人生があり、喪失がある。
特に六階のブラックさんのエピソードには笑って泣いた。
重いストーリーなのだか、そこかしこに散りばめられたユーモアになんども笑い、散ればめられたグッとくることばたちになんども泣いた。
またこの本は合間にさまざまな視覚的な仕掛けがあるのだか、それが物語をよりリアルに感じさせてくれている。
悲劇をそれだけで終わらせずに少年の成長と愛の物語に昇華させていて、ほんとにこの作者はすごい!と思う。
しかも奥さんが私の大好きな「ヒストリー・オブ・ラブ」の作者!
これからも作品が次々翻訳されますように!